ミネベアミツミと日立は、ミネベアミツミが日立のパワー半導体子会社である日立パワーデバイスの全株式と日立グループのパワーデバイス事業に関する海外販売事業を譲受する契約を締結したと発表した。
ミネベアミツミと日立製作所(以下、日立)は2023年11月2日、ミネベアミツミが日立のパワー半導体子会社である日立パワーデバイスの全株式と日立グループのパワーデバイス事業に関する海外販売事業を譲受する契約を締結したと発表した。ミネベアミツミは、足元で約800億円となっている半導体部門の売上高規模を、2024年度に日立パワーデバイスの買収によって1500億円近くまで拡大させてから早期に2000億円の大台に乗せ、2030年度に3000億円の達成を目指す方針である。
日立は同社が所有する日立パワーデバイスの全株式45万株をミネベアミツミに譲渡する。譲渡金額は非公開。譲渡実行時期も未定だが早期の実行を目指す。日立は、株式譲渡で得られる資金をエネルギー分野におけるグリーン事業とサービス事業への成長投資に活用し、企業価値のさらなる向上に努めていくとしている。
日立パワーデバイスは、1957年にダイオードの製造から始まった日立のパワー半導体事業と、1973年にセラミックパッケージの製造を目的に設立された日立原町電子工業が、パワー半導体の設計、製造から販売までの一貫体制の構築を目的に統合し、2013年10月に設立された企業である。主力製品は、産業や社会インフラの電化/電動化のキーデバイスであるIGBTや高耐圧IC、ダイオードで、次世代パワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)デバイスも手掛けている。工場は、本店所在地でもある臨海工場(茨城県日立市)、原町工場(福島県南相馬市)、山梨工場(山梨県中央市)の3カ所で、従業員数は2023年3月時点で1054人。資本金は4億5000万円で、売上高などの業績は非公開となっている。
ミネベアミツミは、2020年7月にエイブリック、2021年10月にオムロンの半導体・MEMS事業を買収するなど半導体部門の事業強化を続けてきた。主力製品は、リチウムイオン電池保護IC、電源IC、タイマーIC、MEMSセンサー、磁気センサーなどのアナログ半導体であり、2023年度の売上高は約800億円を見込んでいる。2024年度には、現行のアナログ半導体の増収に加えて日立パワーデバイスの買収完了により、半導体部門の売上高を1500億円近くまで拡大させたい考えだ。
なお、ミネベアミツミはこれまでも日立パワーデバイスから前工程の製造委託を受けており、事業統合に向けた障壁は低い。ミネベアミツミ自身はIGBTを手掛けてきたが、これまではチップ提供にとどまっており、パワー半導体の製品への組み込み時に重視されるモジュール技術を有していなかった。このモジュール技術や後工程工場を持つ日立パワーデバイスと一体になることで、IGBTの事業規模を大幅に拡大できると見込む。パワー半導体系の技術者数も、ミネベアミツミ出身者が150人、エイブリック出身者が100人で250人だったところに、日立パワーデバイスの150人が加わり400人体制となる。さらに、これまでミネベアミツミで扱っていなかったSiCデバイスの技術者も獲得できる。
この他、日立パワーデバイスがEV(電気自動車)向けなどで提案しているSG(サイドゲート)-IGBTの事業展開にも注力していくという。一般的なトレンチゲート構造のIGBTと比べて同じシリコンベースでありながら高効率を実現できるSG-IGBTは、ミネベアミツミの滋賀工場(滋賀県野洲市)で試作中であり、2024年度の市場投入を計画している。
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