インフィニオン テクノロジーズは、「ネプコンジャパン2024」の「第1回パワーデバイス&モジュールEXPO」において、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体を用いたEV向け車載充電器を展示した。
インフィニオン テクノロジーズは、「ネプコンジャパン2024」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)の「第1回パワーデバイス&モジュールEXPO」において、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などの次世代パワー半導体を用いたEV(電気自動車)向け車載充電器(On-Board Charger:OBC)を展示した。
EVの市場拡大に向けた課題の一つになっているのが充電時間の長さだ。この充電時間の短縮に向けて、大電力を高効率で扱えるようにする次世代パワー半導体を充電スタンドや車載充電器に採用するための取り組みが進んでいる。
インフィニオンは、各国で異なる電力インフラの要件に対応できるように、SiCデバイスとGaNデバイスそれぞれを用いた高効率の車載充電器の構築に向けた提案を行っている。今回の展示では、単相7kWでSiCデバイス搭載、三相10kWでGaNデバイス搭載、三相11kWでGaNデバイス搭載という3種類のレファレンスボードを披露した。
単相7kWのSiCデバイス搭載品は、上面放熱パッケージのSiCデバイスを用いることで車載充電器のベースプレートを用いた省スペースでの冷却を可能にしている。高効率に7kWの大出力を実現するには高周波駆動が必要であり、そのためにSiCデバイスの裏面にゲートドライバICを配置しているが、この配置も上面放熱パッケージのSiCデバイスによって実現可能になっている。電力密度は4kW/l(リットル)だ。
一方、三相のGaNデバイス搭載品は、10kWがインフィニオン、11kWが2023年10月に買収を完了したばかりのGaNシステムズ(GaN Systems)のものになる。EV向け充電器の高効率化ではより高い周波数で駆動できるGaNデバイスが有利といわれている。その一方で、車載電池モジュールの電圧を400Vから800Vに高める取り組みも進んでおり、耐圧1200Vの製品が量産されているSiCデバイスは800V対応が容易だが、耐圧800V以上の製品が実用化されていないGaNデバイスは不利になるといわれている。
今回展示した三相10kW、同11kWとも、PFC(Power Factor Correction)やDAB(Dual Active Bridge)といった回路技術を組み合わせることで800V対応を実現している。また、三相10kWについては上面放熱パッケージのGaNデバイスを採用することで冷却系も効率化しており、電力密度で10kW/lを実現できているという。
これら車載充電器に加えて充電スタンド関連の展示も行っており、インフィニオンのGaNデバイス採用事例として2024年1月に発表された、オムロン ソーシアルソリューションズのマルチV2Xシステム「KPEP-Aシリーズ」を披露した。KPEP-Aシリーズは、従来比でサイズと重量を60%削減するとともに、出力約6kWの充放電能力を持つ充電スタンドとして日本で最小かつ最軽量クラスになるという。
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