F1も電動化が進められようとしているが、ヤマハ発動機はフォーミュラEを選んだ。部品の統一によって参戦費用が軽減されている点がその理由だ。
フォーミュラEホールディングス CEOのジェフ・ドッズ氏は「参戦車両の70%を共通とし、パワートレインやソフトウェアで差をつけるルールにしているのは、コストを抑えるためだ。F1の年間コスト上限は1億1400万ドルで、これにドライバーへの支払いは含まれていない。フォーミュラEのチーム運営コストはF1の10分の1だ。チームが自由に開発できる領域が増えるほどチームの負担は増える。共通部品を多くすることで、レースの競争力も向上してきた。過去9シーズンで8人の年間勝者が生まれて、シーズンの最後のレースまで勝者は分からない展開だった。今期の4レースでも4人の勝者がいる。誰が勝つか予想できるような状態にはしたくない。現時点ではフォーミュラEは急速に成長しているが、成長のペースが落ちたり、レースの競争力が低下したり、もっと費用を使いたいチームが増えたりしたときには、改めて検討する。われわれは(レースとコストの間で)適切なバランスを取ろうとしている」とコメントした。
ヤマハ発動機とローラは2025年(シーズン11)の1戦目からの実戦投入を目指しており、2024年のシーズン10が7月に最終戦を迎えた後、夏には“ローラヤマハ”の車両を採用するチームが明らかになりそうだ。ヤマハ発動機とローラのテクニカルパートナーシップ契約は、具体的な期間は非公表だが複数年を想定している。得られた知見はまず小型二輪車などに展開されるとみられる。
ヤマハ発動機とローラの車両開発をフォーミュラEも歓迎した。写真左からフォーミュラEホールディングスの共同創設者兼チーフチャンピオンシップオフィサーのアルベルト・ロンゴ氏、ヤマハ発動機の丸山平二氏、Lola Cars モータースポーツディレクターのマーク・プレストン氏、フォーミュラEホールディングス CEOのジェフ・ドッズ氏[クリックで拡大]日産自動車は2030年(シーズン16)までフォーミュラEに参戦することを発表した。FIAの公式登録書に署名したことで、2026年(シーズン13)から導入される第4世代のマシン「Gen4」に向けた開発や最適化にも早い段階で着手できるという。Gen4ではエネルギー回生量が最大700kWに、最大出力は600kWに引き上げられる。
モータースポーツから市販車に部品を転用することは簡単ではない。モータースポーツで得られる収穫についてチーフパワートレインエンジニアの西川氏は「コストやNVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)に対する条件がかなり違う。市販車ではコンフォートにすることが重要だが、フォーミュラEのドライバーに快適さは必要ない。その中で性能を突き詰めていくとどこまでいくのかを見極められるので、モータースポーツをやることは大切だ。また、極限の状態でタイヤをどううまく使うかのデータが蓄積されるので、市販車のシャシー制御技術にも相互作用があるのではないか」と述べた。
FIAの公式登録書に署名したときの様子。写真左からフォーミュラEホールディングス CEOのジェフ・ドッズ氏、日産フォーミュラEチームのマネージングダイレクターのトマソ・ヴォルペ氏、FIA シニアサーキットスポーツディレクターのマレク・ナワレツキ氏[クリックで拡大] 出所:日産自動車DHLはフォーミュラEが創設された2014年からオフィシャルファウンディング&ロジスティクスパートナーとしてレースカーやバッテリー、充電ユニット、放送機材、その他資材などを輸送してきた。1レース当たりの輸送量は400トンに上り、フォーミュラEはシーズン10となる2024年は世界10都市で開催されるため世界中を移動する。
フォーミュラEは走行時にCO2を排出しないEVを走らせるが、輸送で大量のCO2を排出しては持続可能なモータースポーツというコンセプトからは離れてしまう。そのためDHLは最先端の持続可能な物流を提供している。
シーズン10では、陸上と海上の輸送全てでバイオ燃料を使用する他、陸海空の輸送手段を組み合わせたマルチモーダル輸送を実施する。英国、イタリア、ドイツにはモータースポーツ専任の担当者70人を置いている。車両や機材、資材などをスムーズに受け入れるため、レース会場となる現地のDHL拠点との連携にも力を入れる。
また、モータースポーツに限らないDHL全体の方針として、船舶や航空機で持続可能な燃料の混合率を2030年までに30%以上にする他、持続可能な航空燃料に対応した最新の航空機の購入、12機の完全電動飛行機の発注(2024年納入予定)なども行う。陸の輸送では2030年までに集配車両の60%を電動化するとともに、物流拠点のスマートビルディング化による排出削減などを推進する。
カーボンニュートラルを掲げるフォーミュラEに合わせて、車両だけでなく物流のCO2排出削減技術も磨かれる。
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