設立当初から企画され、待ち望まれたABB FIA フォーミュラE世界選手権の日本での開催がようやく実現した。
設立当初から企画され、待ち望まれたABB FIA フォーミュラE世界選手権の日本での開催がようやく実現した。東京ビッグサイト(江東区有明)周辺の公道を含むコースが設定され、レースは予選と決勝が2024年3月30日に行われた。
チケットは完売、無料エリアも含めた来場者数は2万人に上ったと報じられている。今回、初のホームレースとなった日産自動車のフォーミュラEチームでは、ドライバーのオリバー・ローランド氏が予選トップのタイムを記録するとともに決勝では2位となった。
モータースポーツとして実績が積み重ねられてきたフォーミュラEは、電動化技術を磨く場としての注目が今後一層高まりそうだ。
「当初はマーケティング目的での参戦だった」(日産フォーミュラEのゼネラルマネージャー兼日産フォーミュラEチームのマネージングダイレクターのトマソ・ヴォルペ氏)という日産自動車は、中期経営計画での電動車開発強化を受けて、フォーミュラEで得た知見を市販車にも還元しようと方針を変更。2022年4月にはレースチームe.damsを買収した(e.damsはルノーとともにフォーミュラE開始の2014年から参戦。日産との参戦は2018年から)。フォーミュラEは2025年5月にも再び東京で開催予定のため、ホームレースでの活躍に力が入る。
ヤマハ発動機もフォーミュラEで電動化技術を強化する。レーシングカー開発会社のLola Cars(ローラ)とともに電動パワートレインを共同開発し、車両としてカスタマーチーム向けに提案する。
“電気自動車のF1(フォーミュラ・ワン)”ともいわれるが、EVならではの特徴もある。「他のカテゴリーで運転していたときは燃料のことを気にせずアクセルペダルを踏めたが、フォーミュラEではエネルギーマネジメントが重要。それが大きな違いだ」(日産フォーミュラEのドライバーであるサッシャ・フェネストラズ氏)と言うように、見どころは速度やタイムだけにとどまらない。
日産フォーミュラE チーフパワートレインエンジニアの西川直志氏も「速く走るためにエネルギーを多く使うタイミングを駆け引きしているのを想像しながら見てもらいたい。先にエネルギーを使いすぎてしまうと後半は遅く走らなければならないこともある」とポイントを語る。
フォーミュラEの参戦車両は70%の部品が全てのチームで統一されている。駆動用バッテリーも全チーム統一部品の1つだが、そのバッテリーの電気をいかに無駄なく使いこなせるかが腕の見せ所となる。それはドライバーにとってだけでなく、チームごとの独自開発が許されている電動パワートレインとそのソフトウェアを手掛ける企業にとっても同様だ。ヤマハ発動機がフォーミュラE向けの電動パワートレインを開発するのもそこに狙いがある。
二輪車をはじめとするヤマハ発動機のさまざまな製品で、カーボンニュートラル実現に向けた電動化が進もうとしている。ヤマハ発動機の製品は四輪車の電動化と比べて使うバッテリーは容量が小さいため、大手の四輪車メーカーのように自社開発するのではなく、“既製品”を採用することになるという。供給されたバッテリーを使いこなし、自社の電動パワートレインとソフトウェアでエネルギーを無駄なく効率的に活用しなければならない点が、今後の同社製品の電動化とフォーミュラEの共通点になるとしている。
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