日本精工(NSK)は新開発のグリスとゴムシールを使った低発塵(じん)性の軸受を開発した。2026年度に売上高15億円を目指す。
日本精工(NSK)は2024年3月19日、新開発のグリスとゴムシールを使った低発塵(じん)性の軸受を開発したと発表した。2024年度にサンプル品の受注を開始し、2026年度に売上高15億円を目指す。既にサーボモータメーカーからサンプル品の引き合いがあるという。
産業用ロボットの関節には動作の位置や速度を制御するサーボモータが搭載されている。自動化の進展に伴い、ロボット用サーボモータの市場規模は拡大傾向にある。
サーボモータには機械とつながる負荷側と反負荷側に軸受が使われており、特に反負荷側では回転の位置情報をフィードバックするエンコーダーや、静止した位置を維持するブレーキといった高精度の位置決めに必要な機能部品の傍らに配置されている。
ロボットに使用されるサーボモータは、自身が移動したり、急加減速したりする他、軸受周囲は80〜100℃という高温になり、長時間の連続運転も行われるなど使用環境は過酷だ。その中で、軸受のグリスから油が分離してエンコーダーやブレーキのディスクに付着すると、エンコーダーの読み取り不良やブレーキ滑りといった不具合が発生し、位置決め精度の低下やロボットの稼働停止などにつながる。
これらの対策として従来は、離油しにくい低発塵性のグリスや、先端が軸受の内輪と接触し油が流出しない接触式ゴムシールなどを使用してきた。ただ、もともと低発塵グリスは半導体製造装置などで使われ、接触式ゴムシールは異物混入防止目的でも使用されるなど、いずれも他用途で既に使われている技術だった。
ロボットのさらなる高精度化と高信頼性へのニーズは高まっており、一層の低発塵性が求められている。しかし、分離した基油がディスクに付着するメカニズム自体がこれまで不明で、対策性能としても実際に付着する量ではなく発塵量という間接的な評価が行われており、現行品以上の性能向上が困難だったという。
今回、NSKでは軸受から飛散した油が浮遊してエンコーダーやブレーキディスクに付着するメカニズムを推定し、実際に高速度カメラを使って軸受から油が飛散していく様子を可視化。さらに、実機の構造、環境を想定した評価試験機を新たに作り、軸受から飛散してディスクに付着する数μm単位の油の量を評価することに成功した。これらによって改良すべき設計要素をより明確化し、低発塵性に優れたグリス、ゴムシールの開発につながった。
新開発のグリスは、高温環境での蒸発を抑制し、耐熱性に優れた組成を選定することで、従来品比で低発塵性能が2倍、軸受が焼き付くまでの時間も2倍になった。ゴムシールについても、リップと呼ばれる内輪と接触する先端部分に新しい形状を採用し、従来の性能を維持したままグリスや油の流出を低減することに成功した。
今後はサーボモータ用軸受の他、低発塵性が要求されるリニアガイドやボールねじなどの直動製品への適用も目指していくとしている。
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