バッテリー電気自動車(BEV)の充電用通信規格ISO 15118-2で規定されるメッセージの通信に対応するために、Charging Manager(ChrgM)BSWモジュールが追加されました。
CPでのDDS対応の続編です。今回は、システムレベル設計情報(System Template)でDDSに関する設定情報を扱えるような拡張が行われました。また、SWアーキテクチャレベルでもPduRとの接続についての見直しが行われ、送受信キュー制御が追加されました。
CPでのSOME/IPのService Discoveryの制御は、これまでECU起動時に自動的に行われるoffer / subscribeと、BswMによる制御の2通りの方法で行われてきました。今回は、これらの制御をより緻密にApplication Layerから行うことができるような拡張(Service Interfaceの追加)が行われています。
R22-11から継続して進められている、AUTOSARでのMACsec(IEEE 802.1AE)による通信保護対応ですが、R23-11では、AP EXP MACsec and MKA(MACsec Key Agreement protocol、IEEE-802.1X)Protocolという文書の形で、MACsecをどのようにAPで使用するのかについてガイドラインを提示しています。
一般にMACsec動作自体はハードウェアにより実現されます。それを動かすには通常OSカーネルを介してMKAの処理が必要になります。このコンセプトでは、APスタック実装者とインテグレーターが連携しながら、APベースのECU上のMKAとMACsecの設定をできるようにするために、ハード、OSカーネルやスタック実装における各種前提の整理を行っています。
High performance computing(HPC)で用いるデバイスの中には、演算高速化のために、あたかも数値演算ライブラリのように動作するハードウェアアクセラレータ(HWA)を搭載するものもあります。
しかし、そのようなアクセラレータは、高速化に最適化されていても、安全な演算のために使えるとは限りません。
そこで、APでの典型的な以下のユースケースに対して、既存のKhronos SYCL 2020 APIを用いた上位APIの導入およびマニフェスト拡張が提案されました。
APのFunction Cluster(FC)の増減もありました。
また、従来はFCの分類グループが以下のリストにある最初の2つだけでしたが、R23-11で再編整理され、さらに2つのグループが追加されています。
現在のアーキテクチャを図2に示します。
前回から2回に分けて、R23-11での新規機能追加などの変更内容をご紹介いたしました。また、AUTOSAR導入について考えることで見えてくるSDVの正体や規範的なものとなり得るもののごく一部についても、連載第30回から私見を述べさせていただきました。
私が申し上げるまでもなく今は大変革期であり、「変えなければ失うものはほぼない」「主流であれば安泰」という状況ではありません。「変えたいこととその理由」「変えたくないこと、変えられないこととその理由」を、それぞれの立場で見直し表明していくことが求められるでしょう。
先にご紹介したAUTOSAR Open Conference(AOC)は、講演者として登壇し発信する機会でもありますし(既に申し込み締め切り済み)、参加者として各種講演聴講やQ&A、そしてネットワーキングイベント(これらはまだ間に合います)のような機会は、「見直し」のためのインプットを得るための、そして、ご自身の理解や考えを他の方と交換して確証を深めるための、絶好の機会だと思います。
櫻井 剛(さくらい つよし)イーソル株式会社 ソフトウェア事業部 エンジニアリング本部 エンジニアリング管理部 Safety/Security シニア・エキスパート/AUTOSAR Regional Hub in Japan(Japan Hub)
自動車分野のECU開発やそのソフトウェアプラットフォーム開発/導入支援に20年以上従事。現在は、システム安全(機能安全、サイバーセキュリティ含む)とAUTOSARを柱とした現場支援活動や研修サービス提供が中心(導入から量産開発、プロセス改善、理論面まで幅広く)。標準化活動にも積極的に参加(JASPAR AUTOSAR標準化WG副主査、AUTOSAR文書執筆責任者の一人)。
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