AUTOSARの最新リリース「R23-11」(その2)AUTOSARを使いこなす(32)(1/3 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第32回は、残り3カ月を切った東京開催の「AUTOSAR Open Conference 2024」の概要と、前回から引き続きとなる最新改訂版の「AUTOSAR R23-11」について紹介する。

» 2024年03月21日 07時00分 公開
[櫻井剛MONOist]

はじめに

 本稿の締め切り頃は啓蟄も過ぎ、だいぶ日が長くなりました。しかし、筆者の地元新潟は、最低気温が氷点下の日もまだありますし、雷とともに直径8mmほどの雪あられ※1)が降りだし、翌朝には雪が積もっていました。とはいえ、今年(2024年)は小雪です。既に花粉が舞い、そのせいで雪も少々黄色くなり、一部の植物が本来の時期よりもだいぶ早く芽吹き開花しています。

 温暖化の影響なのでしょう、天候が極端になってきていることを実感します。開発活動の中でAUTOSARをうまく利用し諸活動の効率を改善したとしても、他のさまざまな要因(産業活動や13年前の3.11のような自然災害、紛争など)によるマイナス要因をカバーできるほどではないことに歯がゆさを感じていますが、多少なりとも、また、できるところから、と考えています。もともと、プラットフォームの効用は、派手な打ち上げ花火のように目立つものばかりではなく、日常での地味な改善の積み重ねです。バズワードとしての鮮度が下がっても逃れられるものではありません。

 さて、今回は、AUTOSAR関連イベントのご紹介と、AUTOSARの最新リリースである「R23-11」で導入/拡張されたコンセプトのご紹介の続きです。

※1)気象庁では5mm以上は雹と呼ぶそうですが、筆者の地元では硬い氷粒(氷あられの大きいもので、当たると痛いもの)でない限り霰(あられ)と呼んでいることが多いように思います(なんて言うと、ご専門の方々や先生方からは怒られてしまうかもしれませんが)。

 コミュニケーション不全の原因は、言葉の定義の違い以外にも多数ありますが、いずれにしても、しばしば活動の非効率につながってしまいます。筆者自身はこれまであまり厳格な定義を求めるタイプではなかったのですが、ここしばらくの報道で取り上げられているさまざまな話題(100円ショップで「裏金」とデカデカと書かれたポチ袋を見かけて苦笑いしてしまいました)や、後に述べるイベント準備に関する引き継ぎ前の曖昧な決定内容、そして「SDV」に関する議論の一部を見ていると、前回の連載第31回で申し上げた「壁を作るだけではなく、内側/外側との連携手段の確立」、関係者間の認識/理解の確立のために最低限必要な「コミュニケーションしようとする意思」、あるいは、第23回で述べた「存在承認」の部分を軽視しているように見え、本当に大丈夫なのかな、と首を傾げたくなります。

1.AUTOSAR Open Conferenceの東京開催およびAUTOSAR Japan Hub活動について

お願い:AUTOSAR Open Conference 2024に参加予定ではあるものの、現時点ではまだ申し込みしていない日本の皆さま、櫻井まで、2024年3月末までにお知らせください!!!

 2024年6月11〜12日に東京のヒルトン東京お台場で開催予定の「第15回AUTOSAR Open Conference(AOC)」についてのお知らせです。

 4月30日までにお申込みいただけましたら、早期割引(150ユーロ/約2万4000円の割引)が適用されますので、どうぞ早めに申し込みページからの参加登録をお願いします。

 特に、決算期末が3月の企業/団体にご所属で「4月になってから正式に申し込む予定」の方は、差し支えなければ、3月中に筆者の櫻井宛(メールアドレス:t-sakurai@esol.co.jp、@は大文字になっているので小文字に変更してください)に、その旨をお知らせ頂けますと大変助かります(同時通訳のレシーバー機材数をそろそろ確定させなければなりませんので、どうかご協力をお願いいたします)。

 AOCでの講演はいつも英語が基本でしたが、今回は開催国である日本の参加者のために同時通訳の準備も進めており、先日から手配を進めております※2)

 また、せっかくの日本開催ということで、初日の6月11日午後の「Technical Sessions 1」では、日本語による講演が2つ組み入れられています。1つ目はベクター・ジャパンさんによる「AUTOSARの基礎・入門」、2つ目は筆者による「AUTOSARを用いた開発やAUTOSAR標準化活動の進め方のご紹介」が予定されています(内容はまだ多少変わる可能性があります)。

 この他にも、関係団体の講演など多数が予定されていますし、各社のAUTOSAR運用に関するさまざまな事例紹介などもございます。現時点では申し上げられない内容もありますが、AUTOSAR CP(Classic Platform)の導入がこれからという方や、AP(Adaptive Platform)対応を始めようとする方が相対的に多いであろう日本の参加者の皆さまにとっては、「AUTOSARを安定して活用できるようにする」という観点で重要な内容が含まれるイベントとなるかと思います。

 既にプログラムもWebサイトで公開されており、詳細が確定するごとに内容を順次更新していきますので、ぜひご覧ください。

 また初日6月11日の夜19時からは、ネットワーキングイベントも予定されています(追加の参加費用は不要ですが、AOC参加登録時にお申し込みが必要です)。もちろん私も参加予定です。会場で皆さまとお目にかかれますことを楽しみにしております。

※2)AUTOSAR Regional Hub in Japan(Japan Hub)としての活動を開始して約1カ月半が経過し、本業の傍ら、AOCなどの国内開催イベントなどの準備を進めておりますが、慣れないことばかりで四苦八苦かつてんてこ舞いです(AUTOSAR Regional Spokesperson JAPANである後藤正博氏が、2022年のご就任以来、事務局組織なしでイベント対応などを行っていらしたのが奇跡に思えます)。

 なお、短縮表記は「Japan Hub」となりました(前回の連載記事でお伝えした際の表記のHub Japanや、Japanese Hubなど、表記が二転三転しておりました)。

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