車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第23回は、「AUTOSAR R21-11」で導入された10の新規コンセプトのうち残りの5つの内容を解説するとともに、AUTOSARの標準化における合意形成のための“黄金の”5ステップを紹介する。
2021年11月25日に発行された「AUTOSAR R21-11」の概要のご紹介、連載第21回から始めて3回目となります。今回は、残りの5つのコンセプトのご紹介です。
もしも、第21回と前回(第22回)をご覧いただいていないようでしたら、まずはそちらをご覧いただけますと幸いです。
R21-11のご紹介の前にイベント関連の更新情報をお伝えします。
第21回で、「第13回AUTOSAR Open Conference(AOC)」の開催予定を2022年3月15日とお伝えしましたが、昨今の情勢を鑑みて延期が決まったとのことです。
新スケジュールは執筆時点では発表されていません。2月中頃以降にアナウンスされるとのことですので、その時期になりましたら、AUTOSAR公式Webサイトのイベント情報をご自身でご確認ください。
AUTOSAR R21-11(Internal Release Number:R4.7.0)では、10のコンセプトの導入が行われています(表1)。これらのうち4つは2020年11月発表の「R20-11」で第1弾が導入されたものですが、続編となる今回でも引き続き多くの機能拡張が行われています※1)。
※1)なお、本連載の前々回(第21回)ではNo.2と3の2つとお伝えしましたが、前回(第22回)で訂正させていただきましたように、No.7と8も続編です。失礼いたしました。
NO. | Concepts | FO | CP | AP | 補足 | State |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | Mode Dependent Configuration (MDC) | x | - | x | 機能拡張 | draft |
2 | System Health Monitor (SHM) ※一部文書ではManagement (表記不統一) | x | - | - | 機能拡張 (続編) | draft |
3 | Classic Platform Flexibility (CP Flexibility) | x | x | - | 機能拡張 (続編) | draft |
4 | Service Discovery Harmonization | x | x | - | 記述改善 | draft |
5 | Memory Stack Rework | - | x | - | 機能拡張 | draft |
6 | E2E for Fields | x | x | x | 機能拡張 | draft |
7 | Rework of PNC related ComM and NM | x | x | - | 作業効率改善(続編) | draft |
8 | 10BASE-T1S | - | x | - | 機能拡張(続編) | draft |
9 | DDS Security in Communication Management DDS Network Binding | - | - | x | 機能拡張 | draft |
10 | DDS Enhanced Discovery | - | - | x | 機能拡張 | draft |
表1 R21-11の新規コンセプト一覧(xは影響を受けるプラットフォーム、FO:Foundation、CP:Classic Platform、AP:Adaptive Platform) |
End-to-End Protection(E2E)は、CPでの従来のシグナルベースの通信においては既に広く使われていますが、R19-11以降、サービス指向通信へのE2E対応も進められてきました。サービスは、SOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)プロトコルに基づき、Event、MethodおよびFieldの組み合わせで実現されます(図1)。
R21-11では、これまで残件となっていたField(EventとMethodの組み合わせ)に関して、保護方法の明確化が行われました。
なお、Fieldは、Methodを用いたGet/Setと、Eventを用いたNotificationから構成され、これらで使用するメッセージはE2Eで保護されます。しかし、Notificationを受けるために必要となるSubscriptionのために使用するメッセージ(SOME/IP Service Discovery Protocol(SOME/IP-SD)に基づくもの)に対しては、E2E保護は行われませんのでご注意ください。
なお、このコンセプトに合わせて、幾つかのE2E Profileが追加されています(P08mおよびP44m)。そちらにつきましては、以降のページでご紹介いたします。
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