このコンセプトではR20-11より、Partial Networking技術に関する複数の課題に取り組んできています。
R20-11ではその第1弾として、階層的に接続されたPartial Network Cluster(PNC)群を、たとえ途中に複数の中継Coordinatorがあったとしても、Top-Level PNC Coordinatorから末端までのノードまでの同期シャットダウンを実現するための規定が追加されました。ネットワーク上の振る舞い(NM PDUへの新規ビット追加)と、それをモデリングするテンプレートおよび実現するBSWの振る舞いの規定などです。
R21-11では、ECU内部、特にBSW間の振る舞いの改善、ひいてはECU Software Integrationの作業性改善が行われています。従来は、PNCの動作開始/停止の要求のたびに、NM PDU内のビット列操作のためにComモジュールの機能を用いる構造でしたので、Com signalの定義などの手間が必要でした。この全体に無駄の多い構造を見直し、ComMモジュールからNmモジュールに対してその操作を行うためのAPIを追加するなどの変更が行われました。また、PNC Gateway動作に関する明確化とそのための機能拡張(主にComM)および複数のTop-Level PNC Coordinatorがある場合の振る舞いの明確化が行われています。併せて、従来のCP SRS NM文書は、Foundation(FO)のRS NM文書に統合されました。
10BASE-T1S(IEEE 802.3cg)は、シングルペアのEthernetであり、最長15mまでの配線長を想定したものです。CAN同様の、調停を必要とするバス型ネットワークとしての利用も想定されています(multidrop/PLCA:他のEthernetのようなネットワークスイッチを用いたものに限定されるのではありません)。
第18回でもお伝えしたように、R20-11では、standalone PHYのユースケースのみへの対応であり、MACPHY(あるいはEthernet Switch Driver、EthSwt)を用いるユースケースには対応していませんでした。しかし、今回R21-11では、10BASE-T1S対応外付けMACコントローラー(SPI経由)と、MII経由でPHY制御を行う2つのケースに対応しています。また、キューを持たないデバイス向けのバッファリング操作に対応し、また、multidrop接続の場合のリンクアップ操作にも対応しています。
AUTOSAR APでは、サービス指向通信を扱うCM(Communication Management)のNetwork Bindingとして、前述のSOME/IPとDDSが用意されています※2)。
DDS Network Bindingにおいて、DDS Security規格をAPのIAM(Identity and Access Management)に対応付けて扱えるようにするのが、このコンセプトです。
※2)先日のAUTOSAR R21-11 release eventの質疑応答では、「SOME/IPとDDSのどちらを使うべきか?」という質問がありましたが、明確な回答はありませんでした。これは当然のことといえるでしょう。DDS(Data Distribution Service)はOMG(Object Management Group)で標準化され、既に広い産業分野で長く使われてきたものですがC、CPではまだ対応されていません。また、SOME/IPは自動車分野向けに現在も開発が続けられているもので、CPでも利用可能です。DDSで都合が悪い部分があるのであれば、SOME/IPを積極的に利用しその結果をフィードバックする、というのが自然でしょう。
前項に続き、APでのDDS関連拡張です。DDS Network BindingでのService Instance AnnouncementおよびDiscoveryを、DDS Topic, DataWriterおよびDataReaderとしてより高い自由度で効率的に、かつスケーラブルに利用できるようにするものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.