車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第31回は、日本におけるAUTOSARの活動状況を報告するとともに、最新改訂版の「AUTOSAR R23-11」を紹介する。加えて、自動車業界で注目を集める「SDV」にどのように取り組むべきかについて論じる。
このたびの令和6年能登半島地震で犠牲になられた方々に謹んでお悔みを申し上げますとともに、被災されました皆さまには、心よりお見舞いと一刻も早い生活再建をお祈り申し上げます。
2024年1月1日のこの地震では、私の住む新潟県の一部の地域でも震度6弱を観測し、また、一部地域では深刻な液状化被害も起きています。
幸い、筆者の自宅は多少壁にひびが入った程度で済みました。しかし、地震被害の映像/ニュース、2023年末の地元での大きな火災※1)、そして、2004年の中越地震の時と同様に引っ越しして1年前後での大きな地震ということで、正直なところめいる部分もございまして、地震の後片付け後もしばらく執筆の手が止まっておりました。幸い、年明けに出張で関東に数回出る機会があり、新幹線のトンネルを抜けた先に見える「青空」でだいぶ復活することができまして、上を見ても下を見てもモノトーンになりがちな雪国では、時折見ることができる青空や、花などカラフルなものを目にすることの効果が非常に大きいと改めて実感しています。
曇り空でも花屋さんの店頭などを眺めにお散歩に出ることや、あるいは、身の回りの模様替えで色彩に少し手を入れてみることなども、気分転換の選択肢として取り入れるのもよいかもしれません。
※1)2023年10月5日掲載の連載第30回で、筆者の地元の新潟県魚沼市 小出南本町商店街で起きた大きな火災(2023年9月26日に発生)についてご紹介しました。同年11月1日にはクラウドファンディングが立ち上げられ、おおよその中間地点の11月26日朝時点では寄付総額が95万9997円でした(2カ月の期間での1次目標200万円の約半分)。最終的には目標の約4分の3の149万2000円で期間終了となり先日分配が行われたとのことです。連載第30回を見てご協力いただけました方がいらっしゃいましたら、筆者からも心より御礼申し上げます。また、今後も、他の災害などと同様に、少しでもお気に掛けていただけますと幸いです。
さて、気を取り直しまして本題のAUTOSARに入ってまいります。
2023年11月15〜17日にパシフィコ横浜で開催された「EdgeTech+ 2023」では「AUTOSARパビリオン」が設けられ、筆者も所属企業のイーソルの展示コーナーで3日間説明員として立たせていただきました。お目にかかることができました皆さまにはあらためて御礼申し上げます。「AUTOSARって、いったい何?」のような入り口の内容から、プラットフォーム運用に関する深い議論やSDV(software defined vehicle)※2)とのつながりなど、多くの方にお声がけいただき議論させていただきました(図1)。
なお、パビリオンにはAUTOSAR20周年記念ロゴが掲げられていましたが、ご来場の方はお気付きになりましたでしょうか。実は、20周年にあわせて、AUTOSAR公式Webサイトに掲げられた公式ロゴマーク(記念バージョンではないもの)も、実はフォントとデザイン細部が変更されています(新旧並べてみないと分からないかもしれません)。ちなみにR23-11で公開された各文書のヘッダ部分には、あえて旧公式ロゴマークが掲載されています。
今回は、AUTOSARに関するイベントとAUTOSAR Japan Hub活動のご紹介、そしてAUTOSARの新バージョンであるR23-11における追加/変更内容のご紹介の第1弾、さらに、SDVに関する所感の続き、この3本立てで進めてまいります。
※2)余談ですが、前回の連載第30回では、「日本国内では2023年5月6日に「SOFTWARE DEFINED VEHICLE」の商標出願が行われています(商願2023-54199)」とご紹介しましたが、第30回掲載直前の2023年10月3日に「出願却下(方式指令)」の処分が下ったようです(経過記録としての公表は2023年10月27日付)。
なお、当該出願は商標出願2022-129663からの第1世代の分割出願でしたが、この商標出願2022-129663自体も2023年2月28日付で同様の処分が下されています。ちなみに、どちらの出願も12区分に対して行われていますので、商標登録出願費用は10万6600円になります(特許庁Webサイトに執筆時点で掲載されている内容に基づく。なお、登録にはさらに39万4800円が必要)。審査も当然大変なお手間がかかるわけですので……(本件については、今回はあえてここまでにしておきたいと思います)。
AUTOSAR Open Conference(第15回AOC)が、2024年6月11〜12日に東京のヒルトン東京お台場で開催されます※3)。当初は2023年内の申し込みに対してのみディスカウント(早期割引)が設定されていましたが、各所からの働きかけの結果、割引適用期間が2024年4月30日までに変更されましたので、ぜひお早目のお申し込みをお勧めいたします(図2)。
筆者も主催者側の一員として参加予定です。というのも、2024年から、筆者と所属企業のイーソルが中心となって、本連載第24回でご紹介した「AUTOSAR Regional Hub in Japan(以下、AUTOSAR Japan Hub)」で活動することとなったからです。今後は、AUTOSARの日本の地域代表であるAUTOSAR Regional Spokesperson for JAPANを務める後藤正博氏とともに、日本国内でのAUTOSARのより良い利活用などに貢献できるよう活動していきます。
※3)円換算すると参加費が高くてびっくりされるかもしれませんが、ユーロ建てでは欧州でのイベントでは比較的よくある価格帯とのことでした。また、会場使用料も、東京開催決定後に空いていた会場の中ではまだ控えめなもので、参加費を高騰させてしまっているわけではない旨、主催者側関係者から説明がありました。
なお、本連載は、今後も引き続き筆者個人としての執筆となります(AUTOSAR、JASPARやそのAUTOSAR標準化WG(筆者が副主査を務めております)および所属先であるイーソルの見解を必ずしも代表するものではございません)。
なお、車載システム開発におけるサイバーセキュリティ対策の成熟度を年次で調査している「自動車サイバー成熟度調査2024」について、2024年2月末まで参加者を募集しています。本調査にはAUTOSARも参加しており、読者の皆さまにもぜひ協力していただきたいと考えております。ご興味のある方は、以下のリンクからご参加いただけますと幸いです。
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