快適性をデザインする 〜快適性を保つエアコンの運転法〜1Dモデリングの勘所(27)(1/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第27回は、ひとが感じる快適さを熱的視点で考え、モデル化、評価可能であることを示した前回の内容を踏まえ、快適性を具体的に評価するとともに、快適性のモデリングから分かったことを整理する。

» 2024年01月17日 09時00分 公開

 前回は、ひと(※注1)が感じる快適さを熱的視点で考え、モデル化、評価可能であることを示した。

 今回は、これを受けて快適性を具体的に評価するとともに、快適性のモデリングから分かったことを整理する。この結果、快適性とは“ひとの熱の収支を制御することである”という結論に至るとともに、連載第20回第21回で扱ったエアコン(エアコンディショナー)が同様に熱の収支を意図的に制御可能な機器であることにたどり着く。

 この2つの結論から、エアコンを“温度を所定の値にする機器”として考えるのではなく、“ひとの熱の収支がバランスする(快適性を保つ)ように熱の出し入れを行う機器”としてデザインすることを考える。このためのエアコンの運転法を考え、モデリング、定式化してその妥当性を解析により検証する。

注1:「人」「ヒト」「ひと」の表記について:本稿では「人:一般的」「ヒト:生物学的」「ひと:人間的(ものとの対比)」と使い分けて表記しています。

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快適性を評価する

 前回実施した快適性のモデルを用いて、ひとの快適性を評価する。図1に示すように、ひとの活動指標および服装指標が時間とともに変化するものとする。朝起きて、活動量が増え、さらに服を着替えて服装指標が大きくなった状態を模擬している。

ひとの活動指標および服装指標の時間変化 図1 ひとの活動指標および服装指標の時間変化[クリックで拡大]

 これを入力とし、室内温度を15℃として快適性を評価すると図2となる。すなわち、起きてすぐはかなり寒いと感じているが、活動量の増加により、涼しい程度となり、服を着替えることにより、ほぼ快適な状態になっていることが分かる。

図1の条件での快適指標の時間変化 図2 図1の条件での快適指標の時間変化[クリックで拡大]

快適性のモデリングから分かること

 前回述べたように、ひとが感じる快適さの熱的視点でのメカニズムは図3に示す通りとなる。すなわち、ひと自体がMなる熱を内在しており、ひとから外に向かって蒸発による熱E、対流による熱C、ふく射による熱Rが放出され、ひとが外部に対して仕事Wを行っていると考える。

ひとが感じる快適さの熱的視点でのメカニズム 図3 ひとが感じる快適さの熱的視点でのメカニズム[クリックで拡大]

 この状態でひとの体内に蓄積される熱Sは下式で定義できる。

式1

 ここで、S=0のとき、ひとと外部の間に熱の出入りはなく、ひとが快適と感じていると考える。一方、S>0のときには、体内に熱が蓄積されている状態なので、暑く感じると考える。一方、上式は前回の検討結果から次式のように表現できる。上式をさらに詳述すると下式となる。

式2

 ここでのAはひとの表面積で、標準的な値として、A=1.7[m2]を用いる。なお、HLi(i=1、2……6)は、それぞれ皮膚、発汗、通常呼吸、乾いた呼吸、ふく射、対流を通した熱の放出量を示す。すなわち、快適性を実現するということは、単に温度をある温度にすることではなく、“ひとに蓄積される上記のエネルギーを常にゼロになるように外から熱を入れたり、出したりすることである”と結論付けることができる。

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