日刊自動車新聞でミライースが発表された2011年当時の記事を読んでみると、全面改良に一般的に4年ほどかかるところを、ミライースは17カ月で商品化したと書かれています。ミライースはJC08モード燃費で30km/l(リットル)を達成し、当時ガソリン車トップとなる好燃費を実現しました。「第3のエコカー」といううたい文句を覚えている方も多いのではないでしょうか。最廉価グレードは価格が80万円を切ったというのも驚異的です。
ミライースの開発では、チーフエンジニアの下に商品企画や設計、デザイン、調達、生産技術、営業、広報など各部門からスペシャリストを集めたチーム体制で、全体最適な考え方によって燃費や価格を作り込んでいったとのことです。各部門の意見を取り込みながら開発を迅速に進めるチーム体制を今後も展開する、という記事もありました。
今ならシミュレーションを活用して開発を効率化し、期間を短縮……なんて話題が出てくるのかもしれませんが、ミライースが登場したのは2011年です。今ほどデジタルに頼れないということは、マンパワーのたまものだったのでしょうか。
第三者委員会の報告書を踏まえれば、ここから認証試験での不正行為が広がっていきました。開発期間の短縮は自動車業界のどの企業も力を入れていることで、輝かしい成功事例だったはずの取り組みが悲しいものに見えてしまいました。
第2位は連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」の中から、電池の「SOC」「SOH」について解説した回がランクインしました。電池の残量や容量、と人々は簡単に言いますが、そもそも残量がどのように分かるのか、容量の劣化が何を意味しているのか、解きほぐして説明しています。
電池は身近にたくさん使われているので、なんとなく分かったつもりでいることが実は多いのではないでしょうか。身近である一方で発煙や発火のトラブルも起きるので、うっすらと不安や不信の念を抱く人もいらっしゃるかもしれません。正しく知り、理解する上でとても役立つ連載です。電気や化学に苦手意識がある方でも読みやすい内容なので、おすすめです。
第3位は和田憲一郎氏の連載で、モーターやインバーター、トランスミッションを一体化した自動車部品「eAxle」を巡る状況を解説した回でした。
自動車の電動化において、eAxleはバッテリーと並ぶ重要な部品です。和田氏はeAxleを手掛ける企業には「システムインテグレーターとしての総合力」「3つの要素部品に対する技術開発力」「(企業がサプライヤーである場合は)自動車メーカーの開発業務の一翼を担う開発力」「エネルギーや熱のマネジメント」の4つが求められると説明しています。
これまでエンジンの開発は自動車メーカーの領域でしたが、eAxleはサプライヤーが開発するケースもあります。また、低価格な小型の電気自動車(EV)向けに割り切った開発を行う企業も必要です。今後も不可欠な重要な部品ですので、興味のある方はぜひご一読ください。
最後に、2016〜2022年のオートモーティブフォーラムの年間ランキングを紹介します。毎年のランキングには「もっと最近かと思っていた」という記事もあれば、懐かしく感じるような記事もありました。各年の閲覧数が多かった人気記事をまとめているので、年末年始の読み物を探している方にも見ていただきたいです。
2023年も大変お世話になりました。2024年もよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください!
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