電池の性能を「客観的」に示すため、さまざまな指標が用いられます。その中でも代表的なのが「SOC」と「SOH」です。今回はこれらの指標について、基本的な内容から、意外と見落とされがちな要素まで、まとめて解説していきたいと思います。
これまでリチウムイオン電池について、その性能を左右する代表的な材料や構造について解説してきました。
そういった種々の要素の組合せによって決定される電池の性能を「客観的」に示すため、さまざまな指標が用いられます。その中でも代表的なのが「SOC」と「SOH」です。
おそらく電池や電気自動車(EV)に関する情報を収集するために本コラムをお読みになっている方であれば、いずれも聞いたことがある指標ではないでしょうか。今回はこれらの指標について、基本的な内容から、意外と見落とされがちな要素まで、まとめて解説していきたいと思います。
SOCは「State Of Charge」の略であり、電池の充電状態を表す指標です。満充電状態を100%、完全放電状態を0%とした場合の電池容量を示したものであり、一般的にはスマートフォンなどに表示されている電池残量をイメージしていただいて差し支えないかと思います。
リチウムイオン電池の容量を測定した際の充放電挙動は参考図のようになります。
容量と電圧には相関性があるので、電圧の計測結果から電池容量(SOC)を推定するのが一般的です。電圧値からSOCを推定する際の注意点は、計測される電圧値のズレをどのように考慮するかです。
先ほどの参考図に示した通り、充電と放電では同じSOCであっても電圧値が異なり、一意には定まりません。これは主に「過電圧」と呼ばれるものが作用した結果です。過電圧はその名前の通り、電池の内部状態によって決定される本来の電圧に対して「過剰」に上乗せされている電圧のことを指します。
あらゆる電池は内部抵抗をもっているため、オームの法則に従い、充電/放電時に流れた電流値と内部抵抗の積に応じた電圧変動が生じます。充電時には電池電圧を上昇させる方向、放電時には下降させる方向に過電圧が働くため、参考図に示したような曲線形状となり、SOCを推定する際にはこの分の電圧変動を考慮する必要があります。
また、電池のSOC推定に影響を与える電圧ズレ要因の1つとして「メモリ効果」が知られています。メモリ効果とは、電池容量を使い切らずにある程度残した状態から再度充放電を行うと、まるで電池が前回の残容量を性能限界だと記憶(メモリ)しているかのごとく、残しておいた容量の付近で性能低下をするように振る舞う現象のことです。
現在のようにリチウムイオン電池が普及する前、主にニッケルカドミウム電池などが使われていたころ、電池の寿命を伸ばすコツとして「ちょこちょこと継ぎ足し充電せずに容量0%まで完全に使い切ってから充電した方がいい」と紹介されていたのは、このためです。
一般的に、リチウムイオン電池にはメモリ効果が発生しないとされていますが、条件によっては微小ながら発生する事例(※1)が報告されている点には注意が必要です。
(※1)関連リンク:「リチウム二次電池のメモリ効果発見」https://www.tytlabs.co.jp/company/results/2013_1.html
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