子ども心に訴えかけるのもニクい演出です。子どもにとって、クルマはワクワクする空間です。個人的には、SUVの荷室部分の秘密基地っぽい感じや、サンルーフから顔をのぞかせたときに見える高い目線の景色が好きでした。3ドアのクルマに乗るとき、倒した前席の隙間を通るのも楽しかったです。アトラクションなのかもしれません。
家のクルマがずっとミニバンだった、という“ミニバンネイティブ”の人にとっては、ミニバンならではのワクワクがあったのではないでしょうか。ワクワクするポイントとして、2列目から3列目に移動する探検っぽさ、天井の高さ、車内を立って歩けることなどが思い浮かびます。バックドアからクルマに乗り降りする楽しみもあったでしょうか。
トヨタ車体のブースには、ミニバンの車内を1.7倍に大きくした空間が用意されています。子どものころに戻った感覚でミニバンの車内を体験することができます。2列目のシートの間を通って3列目に移動し、3列目の端っこに座ると、天井が高くて開放的なのに見えにくい場所に隠れている安心感が生まれ、楽しい気持ちになりました。トヨタ車体 社長の松尾勝博氏は「子どもたちがなぜミニバンが好きなのか、子どもの目線で空間を体験してほしい」とプレスカンファレンスで語りました。
子育てに便利で子どもにとってもうれしいクルマも、時代を超えて通じる価値を持っているといえるでしょう。
ジャパンモビリティショーを取り上げたテレビのニュース番組で、コメンテーターが「日本の自動車メーカーは走りや運転を重視しがちだが、世界の潮流はソフトウェアにある。ソフトウェアで差をつけられるのはまずい」と警鐘を鳴らしていました。
そのコメンテーターの意見が間違っているとは言いませんし、ソフトウェアが果たす役割が大きくなっているのは事実ですが、「どんなクルマやモビリティを作っていくのか」という土台がなければソフトウェアで何をするのかが定まらないのではないでしょうか。トレンドだけを見てソフトウェアに力を入れても、「それでもこれがいい」と選ばれるように芯を食うのは難しいように思えます。
EVを何車種用意するか、レベル幾つの自動運転システムを搭載するか……といったことが枝葉になるくらいの粒度で「これから何をつくるのか」を示せることが、最終製品のメーカーとして選ばれる強みになっていくと思いました。
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