JAPAN MOBILITY SHOW 2023 特集

モビリティに対する「いいな」「好きだな」を掘り下げて土台にする自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

週末ですね。1週間お疲れさまでした。「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」が開幕しましたね。

» 2023年10月28日 10時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 週末ですね。1週間お疲れさまでした。「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」が開幕しましたね。

 一般公開日は10月28日〜11月5日で、会場は東京ビッグサイトです。特別招待日/プレビューデーだった10月27日は盛況だったようですね。週末も混雑しそうです。おいでになる方は楽しんでくださいね。歩きやすく、暑いときに調節しやすい服装がおすすめです。ジャパンモビリティショーの記事も紹介していますので、参考にしていただけるとうれしいです。

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 特別招待日/プレビューデーに先駆けて、10月25〜26日はプレスデーでした。両日ともお昼まで、出展各社のトップによるプレスカンファレンスが入れ代わり立ち代わり行われました。各社のトップが何を、どんな風に、どんな言葉で話すのか耳を傾けながら、私は結婚情報誌「ゼクシィ」のことを考えていました。

 数年前、ゼクシィは「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というキャッチコピーを展開しました。「○○しなくても構わないのだけれど、それでも○○したい」というところが、自動車を含むモビリティや、移動そのものに通じるように思ったのです。

 クルマを買わなくても。バイクを買わなくても。あのブランドじゃなくても。自分で運転しなくても。かっこいいクルマじゃなくても。わざわざ出掛けなくても……しなくても構わないことだらけです。それより重要なことやお金をかけたいことがある人も少なくないのでしょう。

 それでも、このブランドがいいし、自分で運転したい。クルマやバイクが欲しい。あれに乗って出掛けたい。そう思ってもらうには、簡単には変わらない、理屈を超えた「何か」が必要です。その「何か」は、パワートレインの種類やトランスミッション、駆動方式、1回の充電で走行できる距離などのスペック、クルマのスタイリングだけではないように思いました。

できなかったことができるようになる喜びとともに

 象徴的だと感じたのは、「鍛錬の娯楽化」「人間必需品」という言葉が登場したヤマハ発動機のプレスカンファレンスです。鍛錬の娯楽化とは、できなかったことができるようになる喜びや満足感と、それを実感できるモビリティを提供することを指しています。また、人間必需品とは、生きていくのに必要ないかもしれないけれども、心を豊かにする上で必需品となるものを意味します。

 ヤマハ発動機のプレスカンファレンスには社長の日高祥博氏だけでなく、楽器などで同じYAMAHAブランドを展開するヤマハの社長である中田卓也氏も登壇しました。バイクや楽器は、鍛錬の娯楽化や人間必需品という言葉がイメージしやすい製品ですね。

 ヤマハ発動機がジャパンモビリティショーで披露した3輪フルオープンのEV(電気自動車)「TRICERA(トライセラ)」も鍛錬の娯楽化を体現しています。前2輪、後1輪による新たなドライビング体験を提供するというトライセラですが、後輪を前輪と同位相もしくは逆位相に操舵する機能があり、慣れて使いこなせるまで少し練習が必要なのだとか(練習が必要なほど扱いにくく危険だという意味ではありません)。練習して上達すれば、その運転感覚はどんなパワートレインであるかに左右されない楽しさであるそうです。

3輪フルオープンのEV「TRICERA(トライセラ)」[クリックで拡大]

 バイクや楽器、新しい形のモビリティに限らず、練習が必要で、上達すると楽しくうれしいことはたくさんありますよね。さらに、年齢や世代、性別、住んでいる地域や国に関係なく、誰もがそういう対象を持つことができます。製品や機能でそこに寄り添っていけるのは、そう簡単に揺らがない強みになりそうです。

クルマっていいな、好きだな、楽しいな

 マツダのプレスカンファレンスも、印象に残っています。自動車ショーのプレスカンファレンスはたいてい、社長や役員クラスの方が登壇してプレゼンするのですが、今回のマツダのプレスカンファレンスは若手社員3人がそれぞれの目線で「クルマが好きだ」と語るところからスタートしました。

 マツダ 社長の毛籠勝弘氏にプレゼンをバトンタッチした後も、「クルマが好き」というフレーズが繰り返し登場します。「自動車産業からモビリティ産業に変わっていく中でも、誰もが幸せになるようなクルマを提供したい、いいクルマは人生を豊かにするという思いは今後も変わらない」と毛籠氏は語りました。

 その代表例は「ロードスター」なのだそうです。累計120万台を販売し、世界各国にロードスタークラブが生まれ、ロードスターのある生活を多くの人が楽しんでいると毛籠氏は紹介しました。このように「クルマが好きだ」という感情を育てていけるような、人とクルマの関係を深める技術を磨いていくとのこと。

 「やはりクルマは楽しいものだ、いいものだ」と理屈抜きに感じてもらえるクルマを提供し続けたい。マツダのその思いを込めたのが、コンパクトスポーツカーのコンセプト「ICONIC SP(アイコニック エスピー)」です。このコンセプトカーはSNSでも話題になっていますが、写真だけでなく実物を見て、自身の気持ちがどう動くか確認してみてください。「これはいいなあ」と一目ぼれするのは楽しい体験です。

コンパクトスポーツカーのコンセプト「ICONIC SP」[クリックで拡大]
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