次に、製造業の労働生産性について、主要先進国の推移で比較してみましょう。
各国製造業の労働生産性を計算し、ドル換算した数値をご紹介します。産業全体の労働生産性(労働時間当たり)の比較については、ぜひ以前の記事をご参照いただければ幸いです。
図2を見ると、日本の製造業は1990年代に他の主要先進国よりもかなり高い水準に達していたことが分かります。
近年では米国に大きな差をつけられていて、他の主要先進国とも同じくらいの水準となっています。全産業の平均値では、他の主要国よりもかなり低い水準です。日本経済の停滞が続く中で、製造業は頑張っている方とも言えそうですが、かつての水準からすれば相対的に低下している状況であることは否めませんね。
最後に、日本の労働生産性の最新の水準を国際比較してみましょう。まずは全産業の平均値からです。
図3が各国全体のGDPを労働者数で割った労働者1人当たりGDPです。OECD加盟国の内の35カ国について、最新の2021年の数値をドル換算しました。
日本は7万3387ドルで、OECD35か国中19位、G7の中では最下位、OECDの平均値も下回る水準となりますね。日本は生産性が低いと言われますが、この労働生産性の指標からもそれが良く分かります。米国だけでなく英国やドイツ、フランスにも大きく差をつけられている状況のようです。
図4はOECD33カ国について製造業の労働生産性(労働者1人当たりGDP)を比較したグラフです。日本は9万8180ドルで、OECD33カ国中17位、G7中6位で順位は低い方ですが、OECDの平均値を上回っています。
全産業の平均値が19位だったことと比べると、健闘しているとも言えそうです。英国やドイツ、フランスなどを下回りますが、今のところそこまで大きな差をつけられてはいません。
日本は「失われた〇〇年」と称される経済停滞が長期間続いています。今回の労働生産性のデータでもそれが確認できたわけですが、その中でも製造業は全体として縮小しつつも、生産性の面では何とか他国に近い水準で踏みとどまっているような状況のようです。
今後事業環境の大きな変化が予想される中で、日本の製造業は大変興味深い状況にありそうです。
⇒次の記事を読む
⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら
小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.