東北大学は、光の第2高調波発生強度を最も強くする、ヤヌス型2次元物質の積層構造を検証した。広く存在する元素から高強度のSHGを発生できる物質の設計、探索に寄与する研究成果だ。
東北大学は2023年9月22日、光の第2高調波発生(SHG)強度を最も強くする、ヤヌス型2次元物質の積層構造を検証したと発表した。米国のライス大学とマサチューセッツ工科大学との共同研究による成果だ。
ヤヌス型2次元物質とは、表面と裏面に異なる元素を用いて合成した2層の2次元物質を指す。
今回の研究では、原子の種類と位置の情報から固体の電子状態を計算する第一原理計算により、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)の上下のカルコゲン原子層を別の原子にしたヤヌス型TMDにおいて、波長400nmのSHGが発生することを検証した。TMDは、SHG発生の条件となる空間反転対称でない物質を、広く存在する元素から作製できる。
また、SHGの強度(最大非線形感受率χ)が3倍になるヤヌス型TMDの積層方法を、計算上および実験で確認した。
さらに、物質を面内方向に20%ひずませることで非線形な応答が増強し、SHG強度を最大にできるという計算結果を得られた。今後、ひずみヤヌス型TMDによるSHGの実用化に向けた検証が期待される。
入射光のエネルギーを倍にする(波長を半分にする)SHGは、短波長のレーザー光源として半導体微細加工における光露光装置などに利用されている。研究チームは、広く存在する元素から高強度のSHGを発生できる物質の設計、探索に、今回発見した手法が役立つと考えている。
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