東北大学は、生体材料と骨粗しょう症治療薬の併用により、大きな骨欠損を修復する技術を開発した。治療薬を生体材料埋入時に添加するのみのため、患者への負担が低く簡便な方法だ。
東北大学は2020年8月31日、生体材料(人工骨)と骨粗しょう症治療薬の併用により、大きな骨欠損を修復する技術を開発したと発表した。治療薬を生体材料埋入時に添加するだけで、追加投与は必要ない。同大学大学院医工学研究科 教授の鎌倉慎治氏らと、岩手医科大学の共同研究による成果となる。
同大学は、2019年に日本ハム、東洋紡との産学連携によって生体材料「OCPcol」(商品名:コラーゲン使用人工骨「ボナーク」)を製品化している。今回の研究では、これを埋入する際に、国内外で骨粗しょう症治療薬として使用されているテリパラチド(TPID)を局所併用することで、骨欠損修復を試みた。
その結果、併用した場合は、OCPcol単独に比べて早期に骨欠損が修復した。全ての実験例で、大きな骨欠損は十分量の骨組織に置換した。一方、OCPcol以外の市販人工骨にTPIDを添加した場合、埋入後6カ月を経過しても、骨欠損部は修復しなかった。
骨欠損の治療には、患者自身の健康な骨を採取して治療に用いる自家骨移植や、生体材料による骨再生が必要だ。大きな骨欠損の場合、自家骨移植は患者への負担が大きく、生体材料では十分な骨再生が難しいという課題があった。今回開発した技術は、患者への負担が低く簡便な方法のため、緊急手術などさまざまな医療現場での応用が期待される。
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