九州大学は、マウスの骨格筋の再生促進に必要となる新しいタンパク質「H3mm7」を発見した。筋再生などの機能破綻によって引き起こされる疾患の発見や治療法の開発、再生医療への応用が期待される。
九州大学は2018年4月12日、マウスの骨格筋の再生促進に必要となる新しいタンパク質を発見したと発表した。同大学生体防御医学研究所 教授の大川恭行氏らと早稲田大学、東京工業大学、徳島大学、長崎大学との共同研究による成果だ。
ヒストンタンパク質(ヒストン)は、遺伝情報が記された全長2mにおよぶ糸状のDNAを、数μm以下の細胞核内に効率よく格納するための糸巻きとして機能する。大川教授らは、2015年にヒストン亜種を新たに14種類発見したが、これらの機能については不明だった。
今回、これらのヒストン亜種のうち、マウスの筋肉(骨格筋)中にわずかに存在する筋幹細胞に多く含まれる「H3mm7」が、筋肉の再生に重要であることが分かった。
骨格筋がヘビ毒などで損傷した場合、骨格筋幹細胞が筋肉の再生に必要な遺伝子の発現を上昇させ、筋組織へと分化することで修復(再生)する。このように、短時間に筋肉を再生することで、筋肉の恒常性が保たれている。
しかし、H3mm7遺伝子を欠損させたマウスでは、筋再生に必要な遺伝子の発現が促進されず、不完全な骨格筋再生が起こって損傷後の筋肉の再生が遅延していた。その後の解析で、ヒストンH3mm7は筋幹細胞内でDNAを緩めて、細胞内の遺伝子を働きやすくする作用があることが明らかになった。
今回の成果は、ヒストン亜種が、人体を形成する細胞や組織の恒常性を維持する機能を持つ可能性を示唆している。今後、筋再生などの機能破綻によって引き起こされる疾患の発見や治療法の開発、再生医療への応用が期待される。
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