溶着前に、座面などに張地を被せる作業は引き続き必要だ。その際に、張地を芯材に適切に巻き込んでいないと、溶着が不十分になってしまう。そこで張地を被せた後にカメラで画像認識し、AIを活用して被せた部分を検査する。NG判定が出ると、ロボットは作業を行わない仕組みになっている。
従来は溶着のコントロールが難しかったが、センサーなども用いて微妙なコントロールが可能になり、導入が可能になった。
溶着システムは2台導入しており、それぞれ2枚の張地を溶着できる。現在は背もたれ、座面合わせて6種類のアイテムに対応している。デザインによってはまだPPシートが必要なチェアもある。ただ、溶着システムを活用できるカバー方式のチェアを増やすように開発と一緒に取り組んでいるという。
製造現場の人手不足が課題となる中、単純な搬送作業の自動化が急務となっている。関西工場では3台のAGV(無人搬送車)を導入して搬送の無人化を図っている。
5階で塗装された部品は、本体組み立てが行われる3階に運ぶ必要がある。それまで台車に積まれた部品を3階に運ぶ業務は、専任の作業者が1人で行っていた。
AGV導入後は、作業者が所定の位置にセッティング後、タブレット端末で搬送先を指示すると、空いているAGVが台車を取りに来る。そして、新たに設けたAGV専用のエレベーターを使って3階に降り、所定の位置に部品を届ける。
3階で空になった台車は作業者が所定の位置に置き、タブレット端末で指示すると、3階に部品を持って来たAGVが5階に戻る際に回収する。バッテリーの充電も、一定の残量になればAGVが充電ステーションに自ら行き、自動で行われる。
従来、ロボットで行っていた部品の溶接作業においても、部品のハンドリング用ロボットを追加導入して生産効率を高めている。
これまでは作業者が仮り組みした部品をセット後、ロボットが溶接を行い、作業者が部品を反転させて再度ロボットが溶接、その後、作業者がスパッタを除去していた。それをハンドリング用のロボットを導入することで、部品の反転を自動化。作業者は仮り組み部品のセットと、溶接終了後の取り出しだけを行えばよく、負担を軽減した。
照合検査などへのAIの導入に関して永山氏は「人手不足が課題となる中で、誰でも作れるような生産の仕組みが求められる。その上で、不良品を作らない、作れない仕組みをより一層構築しなければならない」と語る。
近年はペーパレス化やフリーアドレス、リモートワークの普及などオフィス環境の変化は激しく、これまで手掛けてきたキャビネットやチェアにも影響は及んでいる。
イトーキ 生産本部 関西工場 工場長の野口猛氏は「最近はソファや木質系の製品の需要が高まっている。オフィスのリビング化が進んでおり、今はその過渡期にある。将来、この工場で何を作っていくべきか、改めて考えていく必要がある」と語る。
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