以上、CAEやDMU、XRなどのデジタルモノづくり技術の活用により、試作回数を減らすことができ、コスト削減や開発期間の短縮だけでなく、試作/実験や手戻りで生じる廃棄物の削減、さらには環境に配慮したモノづくりに貢献できることを紹介しました。
CAEやXRの活用により、現物レスで検証できることを説明しましたが、そのためには3Dモデルが必要であり、3D CADによる設計が大前提だということを忘れてはなりません。2D CADで作成したデータでも一部、CAEを行うことはできますが、残念ながらより高度なCAEやDMU、XRの利用にはつなげられません。
突き詰めて考えると、「3D CADを使用した設計がサステナブルな設計の第一歩」だといえます。既に3D CADで設計されているのであれば、もう一歩先に進むために、今回紹介したCAEやDMU、XRに取り組んでみてください。環境に配慮した設計の実現だけでなく、QCDの向上に確実につながります。
CAEやDMU、XRに取り組む際、高度なことをやるためには、ある程度高額な設備投資が必要となります。ただ、いきなり高度なことを実現する必要がなく、スモールスタートで着実に成果を積み上げていきたいと考えている場合は、無料あるいは安価なサービス/設備などを活用するところから始めてみるのがよいでしょう。例えば、ARであればスマートフォンでも利用できますし、CAEであれば3D CADに付属しているものもあります。まずは身近なところから始めてみましょう。
XRであれば、3D CGやゲームエンジン、それらに関連するソフトウェアを利用してみるのもよいでしょう。3D CADのデータフォーマットや、STL/OBJなどのポリゴンデータを読み込めるソフトウェアもあります。
皆さんの手元に、3D CADで設計した3Dモデルが既にある場合は、それをフル活用することを考えてみましょう。3D CADを扱う設計部門だけでなく、他部門の関係者とも3Dモデル(3Dデータ)を共有し、DMUやXRなどに活用を広げていくことをぜひ検討してみてください。 (次回へ続く)
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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