【総まとめ】企業が成長していくために必要なデジタルエンジニアの育成デジタルエンジニアの重要性と育成のコツ(8)(1/2 ページ)

デジタル技術を活用し、QCDの向上を図り、安全で魅力ある製品を創り出せる「デジタルエンジニア」の重要性について説く連載。最終回となる今回は、これまでお届けしてきた内容から重要ポイントを抽出して総まとめとする。

» 2023年03月01日 07時00分 公開

 本連載「デジタルエンジニアの重要性と育成のコツ」では、3D CAD/CAM/CAE、3Dプリンタ、3Dスキャナーといったデジタル技術の活用とそれらを使いこなせる人材育成についてお伝えしてきました。いよいよ本連載も最終回です。今回は、これまでお届けしてきた内容から重要ポイントを抽出し、“総まとめ”といたします。

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広まるデジタルエンジニアの必要性

 連載第1回「デジタルエンジニアの定義と必要なこと」では、デジタルエンジニアリングの活用は、設計だけにとどまらず、生産技術や品質管理部門、営業や購買といった部門でも重要なものになりつつあることを紹介しました。

3D CADデータを核としたデジタルエンジニアリング活用例 図1 3D CADデータを核としたデジタルエンジニアリング活用例[クリックで拡大]

 また、医療や建設、飲食業などにおけるデジタル技術活用のイメージに触れるとともに、大企業の技術者だけがデジタルエンジニアになれるわけではなく、誰もがデジタルエンジニアになれる可能性があり、近年その必要性が高まってきていることを解説しました。

 デジタル技術を最大限に生かすために必要なことは、デジタルツールを単に使いこなすだけでなく、安全で魅力ある製品を創り出せる人であるかが問われ、デジタル技術以外の知識やスキル、経験をどれだけ持っているかが重要になることをお伝えしました。

 製造業でいえば、構造力学や材料力学などの設計の知識だったり、切削や溶接といった加工技術だったりなど、それらの専門性を併せ持つことで、3D CAD/CAM/CAEなどのデジタルツールを手に入れた際、初めて最大限の効果を発揮できます。

 実際に、モノづくりの現場で起きていることはデジタルではなく、アナログな事象ばかりで、アナログで起きている課題や問題をデジタルでどう解決できるかを考え、実際にアナログで起きていることをデジタルに置き換えられる人材(=デジタルエンジニア)が求められます。

 アナログで起きている事象を判断するには、目で見て、音を聞き、臭いを感じ、手で触れるといった“人間の五感”が不可欠です。その五感を鍛える/養うこともデジタルエンジニアには必要になります。設計では、使う人が使いやすいものを作る、喜んでもらえるものを作るといったように、相手のことを考えられる“人間力”が重要になります。

社内でデジタルエンジニアリングを進めていくために必要なこと

 デジタルエンジニアリングを進めていくには、3D CADで3Dデータを作成できなければ何も始まらないため、連載第3回「3D CAD操作の効果的な習得とモデリング力をアップするための秘訣とは」で、自社の使いやすいように3D CADのメニューをカスタマイズすることや、外部のセミナーを受講することをオススメしました。また、セミナー受講後に復習をすることの重要性もお伝えしました。

 連載第2回「失敗事例から学ぶ! 3D CADから始めるデジタルエンジニアリング」では、3D CADの操作を習得するための心得を解説し、3Dデータを作成しただけでは、デジタルエンジニアリングが成功しないことを説明しました。

 真のデジタルエンジニアリングを実現するには、従来の業務プロセスを変えていく必要があります。設計部門に3D CADを導入しても、他部門が2D図面を中心とした業務を進めてしまうと、設計者は3Dデータを作成し、さらに2D図面も用意しなければならないため、3D CAD導入によって業務が楽になるどころか、かえって工数が増えてしまい、設計現場が完全に疲弊してしまいます。その結果、結局2D CADに戻ってしまうというケースも珍しくありません。

 社内や関連会社での業務プロセスを変えていくためには、3D CADのスキルだけを持っている人が先頭に立って進めてもうまくいかず、全体を調整できる人材が必要です。設計部門における3D CAD導入/3Dデータ活用は、設計業務の効率化や品質向上などのメリットが得られますが、それだけにとどめるのではなく、部門や業務プロセスをまたいで全社で3Dデータを活用していくことで、全体最適化を図り、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現につなげることができます。

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