現代のモノづくりにおいて、3D CADやCAE、CAM、3Dプリンタや3Dスキャナーといったデジタル技術の活用は欠かせない。だが、これらを単に使いこなしているだけではデジタル技術を活用した“真の価値”は発揮できない。必要なのは、デジタル技術を活用し、QCDの向上を図り、安全で魅力ある製品を創り出せる「デジタルエンジニア」の存在だ。連載第3回では「3D CAD操作の効果的な習得とモデリング力をアップするための秘訣」について解説する。
前回は、デジタルエンジニアリングの“核”となる3D CADの導入、そして、社内で活用していくための人材育成について、失敗事例を交えながら解説しました。
今回は、3D CADの操作方法を習得するためのコツについて、つまずきがちなポイントを紹介しながら詳しく説明していきます。ここで紹介する内容を押さえておけば、社内で3D CADを活用していくための人材育成にも役立つはずです。
一般的な機械設計用の3D CADは、多くの機能が搭載されています。汎用(はんよう)的に使用できるようになっているため、板金設計、金型設計、配管など、さまざまな用途で使う機能/コマンドが搭載されています。もちろん、これら全てを使いこなす必要はありません。ご自身の業種や業務にマッチした使い方をすればよいのです。
3D CADには“形状を立体化する機能”が追加されているため、機能が多過ぎて悩んでしまうという方もいらっしゃるでしょう。そのような場合には、よく使うコマンドをショートカットキーやツールバーに設定したり、使わない機能のアイコンを非表示にしたりするなどして、カスタマイズすることをオススメします。こうすることで、使いたいコマンドが探しやすくなります。
例えば、普段、旋盤加工部品関係を取り扱っているのであれば、回転、押し出し、フィレット、面取り、穴コマンドといった主要機能さえ覚えれば、ひとまず3D CADで業務が進められるはずです。
しかし、独学や集合セミナーで3D CADの操作を習得する場合、自分がどの機能を学び、どれを覚えたらよいのかを判断するのは難しいでしょう。そのため、最も理想的なのは、外部の講師に依頼して個別トレーニングを実施してもらうという方法です。自社あるいはご自身の目的に合ったカリキュラムを基に、最短で3D CADの操作方法などを習得できるはずです。もちろん、その分費用が掛かります。
ただ、最短で学べることが必ずしもよいわけではありません。自身の業務に関連する使い方や機能などは理解していても、汎用的な使い方を学んでいないため、応用が利かないというケースが考えられます。例えば、旋盤加工用の部品はモデリングできても、フライス加工用の部品はうまくモデリングできない……などの弊害が出てくる可能性があります。
そのため、筆者が依頼を受けて個別に3D CADのトレーニングを行う際は、依頼者にとって必要な機能を使用用途から抽出し、それらを確実に使えるよう操作方法などを教えるとともに、3D CADの基礎として知っておいた方がよい機能についても併せて教えるようにしています。
また、3D CADの活用効果は設計業務の効率化だけにとどまらず、全社における3Dデータ活用/データ連携を推し進めることで、その価値を最大化することができます。そうした将来的な活用の方向性やメリットもお伝えしつつ、関連した機能を含めて紹介したり、長期的なトレーニングプランを提案したりしています。初級、中級、上級、実践といったレベルに応じてステップアップできる内容を用意しています。
筆者としては、基礎の習得は集合トレーニングなどを受講し、さらなるスキルアップが必要であれば個別のオーダーメイドのトレーニングを依頼するのがオススメです。3D CADによっては、無料のチュートリアルやヘルプページがあったり、学習用の動画コンテンツが用意されていたり、書籍が販売されていたりなど、独学で習得するための手段もありますが、一度は外部のトレーニングを受けてみるといいでしょう。独学では気付かなかった便利な使い方や機能を知る機会にもなり、さらなるスキルアップが図れるはずです。
まずは、無料の体験セミナーや3D CADに付属しているチュートリアルなどを活用してみましょう。もし、それが難しそうであれば、集合トレーニングを受けたり、書籍があれば購入して基礎を学んだり、動画を見たりするなど、自分に合った方法を見つけてみるのもオススメです。そして、さらなるスキルアップを図りたければ、オーダーメイドの個別トレーニングを受けるというステップもよいかと思います。
3D CADも日々進化し、機能が追加されているので、3D CADベンダーや代理店などが実施している新機能紹介セミナーなどに参加し、新しい情報を得ることも重要です。今までできなかったこと、時間がかかっていたことができる新機能が搭載されている場合もあるので、日々の情報収集にもぜひ努めてください。
多くの3D CADベンダーが毎年イベントを開催し、最新事例や新機能の紹介などを行っています。今はオンラインで視聴できるものも多くありますので、現在特に困っていることがない場合でも、きっと新しい発見があるはずですので、3D CADベンダー主催のオンラインイベントも積極的に活用してみるといいでしょう。
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