脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。今回は、3次元の設計環境を活用できる人材の育成について取り上げます。
前回、前々回で“3次元の設計環境”をテーマに、ハードウェアおよびソフトウェア環境の選び方について解説しました。
ハードウェア、ソフトウェアがそろったら、いよいよ3次元の設計環境を活用できる人材の育成です。というわけで今回は、“3次元の設計環境とうまく付き合うための人材育成”について取り上げたいと思います。
3D CADを活用できる人材を育成する場合、まずは「目的とゴール」を明確にすることが大切です。自社で3D CADを活用し、何をどうしたいのか? という目的意識を社内で統一させましょう。
3D CAD導入の目的は、干渉/組み立て不具合といった設計ミスや試作回数の低減によるコスト削減、時間短縮、あるいは新製品開発や新規設計案件の受注など、企業によってさまざまです。だからこそ、“組織のありたい姿”を描き、直面している課題解決に努めるとともに、“その先”を見据えた人材の育成を心掛けましょう。
目的とゴールが明確になったら、次は「スケジュール」を作成します。スケジュールを作成する中で、教育方法について検討することになるかと思いますが、3D CADを独学で覚えるのは難しく、きちんとした操作方法を習得しないと業務の効率化を図ることができません。
教育には「集合教育」と「個別教育」があり、それぞれメリットとデメリットがあります。なお、ここでいう集合教育とは、メーカーなどが定期的に開催している日時と場所が指定され、決まったカリキュラムで行う教育のことで、個別教育とは自社の要望に合わせて日時と場所を決め、オーダーに応じたカリキュラムで実施する教育のことを意味します。
メリット
・個別教育と比べて受講費用が安価である
・一般的な基礎知識を幅広く学ぶことができる
・普段の業務を離れ、受講に集中できる
デメリット
・開催場所が遠い場合、交通費や宿泊費がかかる
・自社に必要のない機能も教育内容として受講しなければならないことがある
・受講者のレベルのバラつきにより、進捗(しんちょく)が遅れることがある
メリット
・自社の日程に合ったスケジュールで学ぶことができる
・自社の業務内容に合ったスキルを学ぶことができる
・分からないところを質問しやすく、理解を深めやすい
デメリット
・集合教育と比べて個別教育は費用が高い
・自由に日程が組めるため、教育が先延ばしになってしまうことがある
・カリキュラムによっては、教育に偏りが出てしまうことがある
筆者のオススメは、基礎教育は集合教育で行い、受講費用を抑え、基礎的なことを幅広く学び、実務的な内容は個別教育で自社に合った使い方のスキルを伸ばしていくというやり方です。
使用する3D CADソフトによっては、Web上に使い方を学べるサイトがあったり、書籍が販売されていたりします。こうした独学で学べる環境が整っていると、外部教育の費用などを抑えることができますが、途中で挫折してしまったり、習得に時間がかかったりすることも多いため、多少費用がかかっても外部教育を選択する方がよいでしょう。
社内の複数人を対象に3D CAD教育をする場合は、交通費や宿泊費がかかることもあるため、個別教育を選択して講師を社内に招いた方が費用を抑えられるかもしれません。また、集合教育に1〜2人参加させて、後日、その人たちが講師となって社内で教育を行うといったやり方も1つの手段です。集合教育の参加者は、社内に戻って教えなければならないという任務があるため、より集中して受講してくれるはずです。
図1は、連載第3回「3D CADの導入と社内展開を助け、その効果を最大化するための環境づくり」で紹介したものですが、3D CAD導入の際のスケジュール例です。
図1の“よくある失敗事例”にある通り、講習会やチュートリアルなどで、あらかじめ準備されたモデルで学習すると、そのときはできるようになった気になりますが、いざ自社製品を設計しようとしてもうまくいかず、徐々に3D CADの操作から遠のき、最終的に忘れてしまうといったことも多々あります。
管理者は教育を受けさせるだけではなく、自己学習できる時間を確保してあげてください。特に、教育を受けた後の復習は大切です。何もしないままだと、時間の経過とともに、せっかく身に付けたスキルを忘れてしまいますので、講習を受けた後はできるだけ早く、自己学習のための時間を確保するようにしてください。また、管理者は定期的に学習スケジュールの進捗をチェックするように努めましょう。
操作や設定など、分からない点を気軽に相談できる環境も整備しましょう。導入直後は社内に聞ける人がいませんので、費用はかかりますがメーカーや商社のサポートに加入し、電話やメール、リモートでのサポートが受けられる環境を用意すべきです。
特に最初の1年間は、業務をしていく中で分からないことが多く出てくるため、サポート加入は必須といえるでしょう。こうした環境がないと、分からないことに何時間も費やしてしまい、非効率的です。分からないことに直面してもサポートに相談できるという安心感を与えてあげることも大切です。
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