カシオの腕時計「G-SHOCK」で新たに採用された「タフシリコーンバンド」は“金属調の樹脂バンドの実現”と“装着性と耐摩耗性の両立”という別軸で進められてきた2つの開発テーマが1つに合わさったことで誕生した。担当者に話を聞いた。
ベゼルもバンドも全て金属(フルメタル)のように見えるが、実はバンド部は金属調の蒸着処理を施した新開発の“樹脂バンド”が採用されている。その名も「タフシリコーンバンド」だ。
カシオ計算機(以下、カシオ)が2025年1月24日に販売を開始した「FINE METALLIC SERIES」に採用された新開発のバンドは、“金属調の樹脂バンドの実現”と“装着性と耐摩耗性の両立”という別軸で進められてきた2つの挑戦が1つに合わさったことで誕生したものである。
タフシリコーンバンドの特長や開発経緯について、カシオ 羽村技術センター 時計BU 商品企画部 部長 チーフプロデューサーの齊藤慎司氏、同 開発本部 機構開発統轄部 第一機構開発部 第2外装開発室 リーダーの安田巧氏、同 デザイン開発統轄部 第一デザイン部 Gデザイン室 リーダーの池津早人氏の3人に話を聞いた。
――まずは、タフシリコーンバンドを初採用したFINE METALLIC SERIESについて教えてください。
齊藤氏 FINE METALLIC SERIESは、G-SHOCKの初代モデル「DW-5000C」から継承した角形フォルムの「GM-5600YM」(カラー:シルバー)と「GM-5600YMG」(カラー:ゴールド)、八角形フォルムで人気を集める「2100シリーズ」をベースとする「GM-2100YM」(カラー:シルバー)と「GM-2100YMG」(カラー:ゴールド)の4モデルで展開している。
主に若者をターゲットにしており、G-SHOCKのゴツゴツとしたイメージを抑え、シンプルなベゼルを採用することで、スマートで、アクセサリーのような感覚でさらっと着けられるデザインを目指した。普段使いはもちろんのこと、ビジネスのシーンでも違和感なく使える。国内だけでなく、グローバル市場での展開も視野に入れ、文字盤の美しさなどデザイン面にこだわったモデルに仕上がっている。
齊藤氏 最大の特長は、メタルベゼルに金属調の蒸着処理を施した樹脂バンドを採用している点だ。その見た目だけでなく、シリコーン素材を取り入れることで着け心地の良さも追求している。われわれはこのバンドを「タフシリコーンバンド」と命名し、約10年の歳月をかけて開発した。
今回販売を開始したFINE METALLIC SERIESは、この新開発のバンドの誕生を起点に企画された商品となる。先にターゲットユーザーを決めてから商品を企画する流れとは異なり、FINE METALLIC SERIESは技術先行型でテーマやアイデアを後から付け足しながら具現化していったものだ。
――タフシリコーンバンドの特長について教えてください。
安田氏 タフシリコーンバンドは、バンドの内側に柔らかく着け心地の良いシリコーン素材を採用し、表面(バンドの外側)を耐久性の優れたウレタン樹脂シートで保護する二重構造となっている。表面を覆うウレタン樹脂シートの裏側に蒸着などの加飾処理を施すため、表面に皮膜を付着させる一般的なメッキ処理のように使用途中でボロボロと剥がれたり、ひび割れたりすることがない。もちろん、「タフネス」をうたうG-SHOCKの厳しい品質基準をクリアしており、耐衝撃性、耐摩耗性にも優れている。
安田氏 また、シリコーンと加飾処理を施したウレタンを一体で成形するため、通常の外からの塗装では色がきれいに入り切らない、バンドの波形状(凹凸部)の奥にもしっかりと加飾が追従し、高い品質を実現している。タフシリコーンバンドは、シリコーンとウレタンの異種材料による一体成形技術、そして加飾技術の双方を有するパートナー企業のサンアローの協力を得て実現することができた。
齊藤氏 今回販売を開始したFINE METALLIC SERIESは、金属調の蒸着処理によって本物のメタルバンドのような見た目と質感を実現しているが、構造として透明のウレタン樹脂シートの裏側に加飾ができるため、金属調の蒸着処理以外のさまざまなデザイン展開も可能だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.