フォアキャスティング型とバックキャスティング型は、どちらかが良い/悪いと短絡的に評価できるものではありません。スキルマネジメントの目的によって、採用するアプローチが変わります。
工場や拠点内の技術/技能伝承や多能工化、若手人材の育成が目的であれば、現場主導のフォアキャスティング型で進める方が好ましいでしょう。例えば、製造現場の場合、生産効率のボトルネックになっている工程があります。もちろん、ボトルネックの要因は技能職の保有スキルのみではありませんが、保有スキルの偏りや不足など、スキル起点で考えることで施策を導き出すこともできます。
一方、劇的に外部環境が変化し、既存事業の市場規模が成熟あるいは縮小局面にあるケースではどうでしょうか。このような場合、新規事業開発や事業構造の転換が求められていると言えます。新規事業開発は、これまでと異なるスキルの設計/開発が必要であり、既存事業の業務プロセスを起点としたフォアキャスティング型は前述のように不向きです。経営/事業を理解するマネジメントがバックキャスティング型でクリティカルスキルの方針を出し、会社を上げてスキル開発を進めることが必要です。
ここまでスキル整理の考え方として、フォアキャスティング型とバックキャスティング型の2つがあることを説明してきました。バックキャスティング型を最終的に採用するにしても、現実的にはまずフォアキャスティング型で各職場のスキルがある程度把握できている状態の方が進めやすいかもしれません。
ここからはフォアキャスティング型とバックキャスティング型のスキル整理の進め方をそれぞれ紹介します。
通常、スキルは階層構造で整理していきます。これをスキル体系と呼びます(下図参照)。階層が深くなるごとに、スキルの粒度は詳細化されていきます。
初期の階層整理は、3〜5階層以内に収めることをお勧めします。最初は粗く、徐々に詳細化するほうが途中で挫折しにくいです。
スキルの階層構造を整理する際、多くの企業が迷う点は「スキルの切り口」です。切り口はスキルを整理する際の着眼点であり、人材の保有スキルを評価する単位を構造化、要素分解したものです。スキル整理の切り口としては、以下が代表的なものとなるでしょう。
製造業における技能職の場合、メインは業務プロセスや設備/装置単位でスキルを整理することが多い印象です。技術職の場合、どの工程を担当できるかより、担当できるアウトプットや要素技術の理解など、専門性を評価するケースが多いです。
整理の進め方として以下に一例を示しておきます。
注意点は、最初から細かくスキルを要素分解しすぎないことです。まず粗めの粒度で設計したスキルをもとに試運用し、検証/見直しすることが良いでしょう。通常スキルの整理はExcelで行われますが、MECE(漏れなく、ダブりなく)を追及した結果、細かくなりすぎてしまうケースが後を絶ちません。細かすぎるスキルは目標設定/評価の負荷を著しく上げてしまうため、運用の定着化を難しくしてしまいます。スキルマネジメントの目的に都度立ち返り、運用性を意識した粒度で定義することが必要です。
バックキャスティング型は、フォアキャスティング型とはやや進め方が異なります。まず、組織のミッションや事業の目標からクリティカルスキルを特定します。
スキル整理は、フォアキャスティング型とバックキャスティング型のアプローチがあることをお伝えしてきました。採用するアプローチは、スキルマネジメントの目的によって変わります。
スキルマネジメントの目的は、スキルデータの活用と施策の実行によってもたらされます。次回は、スキルデータの活用をご紹介したいと思います。
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