脱炭素社会と循環型社会の両立は一筋縄ではいかない自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2023年08月26日 09時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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温室効果ガスを減らすか、サーキュラーエコノミーを追求するか

 こうしたジレンマに関して、国立環境研究所が2023年8月24日、循環型社会の実現に向けた指標の改善と温室効果ガス(GHG)の排出削減が両立しないサプライチェーンの要因を特定したと発表しました。

※関連リンク:物質フロー指標の改善と温室効果ガス排出削減が両立しないサプライチェーンの要因を特定(国立環境研究所)

 循環型社会に向けた進展状況は、「資源生産性=GDP/天然資源等投入量」「最終処分量=廃棄物の埋め立て量」「入口側循環利用率=循環利用量÷(循環利用量+天然資源等投入量)」「出口側循環利用率=循環利用量÷廃棄物等発生量」の4つの“物質フロー指標”で評価されます。国立環境研究所物質フロー革新研究プログラムの研究チームは物質フロー指標と温室効果ガス排出量に作用する経済的要因と技術的要因が与えた影響を分析しました。

 その結果、2011年から2015年にかけて物質フロー指標の資源生産性や循環利用率を改善した要因は、温室効果ガスの排出量削減には必ずしも寄与していないことが分かったそうです。この要因を細分化すると、原材料や部品の調達、輸送などを通じてもたらす間接的な産業活動での物質フロー指標改善が、逆に温室効果ガス排出量の増加を招いたことが判明したとしています。

 また、2011年から2015年にかけて物質フロー指標を4つとも改善したのは、経済的要因と技術的要因の変化が複雑に作用した結果だったそうです。例えば、「資源生産性」に関しては、単位生産あたりの化石燃料の投入量や家計消費、サプライチェーン構造の変化が指標の改善に貢献した一方で、付加価値率の変化は指標の悪化を招きました。

 物質フロー指標を改善させたが温室効果ガスの排出を増加させた、反対に物質フロー指標を悪化させたが温室効果ガスの排出を低減した、という不整合の状態が顕著なのは、「資源生産性」や「循環利用率」だったとしています。また、「資源生産性」や「循環利用率」の不整合はスコープ1や2では比較的小さい一方で、生産関連や固定資本関連で大きくなり、30〜70%の産業部門が該当するとのこと。

物質フロー指標と温室効果ガス排出に対して不整合な寄与をした産業部門の割合。RPは資源生産性、FDは最終処分量、CUinは入口側循環利用率、CUoutは出口側循環利用率を示す[クリックで拡大] 出所:国立環境研究所

 国立環境研究所は「固定資本形成に伴う物質消費の抑制とGHGの排出削減を同時に達成することが、将来の脱炭素社会に向けた物質フロー管理において優先すべき課題である」と指摘しています。既存の機器や設備、建造物などを最大限に活用し、固定資本形成に必要となる鉄鋼やセメント、ガラスなど製造時に多くの温室効果ガスを排出する物質の消費を抑えることが重要になるとしています。

 また、循環型社会と脱炭素社会を両立しながら促進するには、産業部門レベルで物質利用と温室効果ガス排出の不整合を解消する取り組みが求められる、としています。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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