ヤマハ発動機がプール事業から撤退する。2024年3月末で営業活動を終了し、他社への事業譲渡なども行わない。これまでに納入したプール本体などのアフターサービスは継続する。
ヤマハ発動機は2023年7月3日、プール事業から撤退すると発表した。2024年3月末で営業活動を終了し、他社への事業譲渡なども行わない。これまでに納入したプール本体などのアフターサービスは継続する。
同社のプール事業は、ボート製造で実績のあるFRP(繊維強化プラスチック)加工技術を生かして、1974年に日本初のオールFRP製プールを製品化したところから始まっている。以降、スクール、幼児、レジャー、フィットネス、住宅/家庭、医療などさまざまな用途に合わせたプールを日本全国に納入しており、中でも長さ20m以上のスクールプールの累計出荷は6500基を超え国内トップの実績を誇る。
プール事業の直近10年間の業績は、売上高約40億円で推移しており営業利益も黒字を確保していたが、2022年12月期については売上高が約36億円となり営業損失を計上していた。今回の事業撤退の理由としては「現中期経営計画においてポートフォリオ経営を進める中で、既存事業や新たな成長事業に経営資源を集中させるため」(ニュースリリースより)としている。
これまでプール事業は、プレジャーボートなどを中核とするマリン事業の下で展開してきた。2022〜2024年の新中期経営計画における事業ポートフォリオの方向性では、マリン事業が、現在のキャッシュの創出源として収益性の維持と向上が求められる状況にあった。
FRP製プールでは国内トップシェアということもあり、他社へのプール事業の譲渡も検討したが総合的な判断の結果として事業撤退を決断したとしている。なお、プール事業の撤退による連結業績への影響は軽微だという。
ヤマハ発動機のプール事業は、同社の事業多角化の代表例として語られることが多い。二輪車メーカーとして出発した同社が創業直後の1950年代後半から、新素材として当時注目されていたFRPの研究開発に取り組む中でモーターボートの船体材料としての採用が進み、そのFRP技術の展開を広げるべく1974年に発売したのがFRP製プールだった。日本のプール施設の歴史は、ヤマハ発動機のプール事業の歩みと重なり合う面が少なくない。今回、発足から50年目となる節目で事業撤退の発表となった。
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