東レリサーチセンターは、さまざまな機器分析を組み合わせ、全固体電池の正極内部で電極活物質と固体電解質が剥離していることや、硫化物固体電解質の化学変化が電池性能の劣化を招くことを明らかにした。
東レリサーチセンターは2025年5月12日、さまざまな機器分析を組み合わせ、全固体電池の正極内部で電極活物質と固体電解質が剥離していること、硫化物固体電解質の化学変化が電池性能の劣化を招くことを明らかにしたと発表した。産業技術総合研究所との共同研究による成果だ。
今回の研究では、電子顕微鏡での観察、複数の分光手法を組み合わせることで、充放電後の固体電解質と電極界面の形態、組成変化を分析し、電池の性能が劣化する原因を調べた。
その結果、電池容量の減少といった、充放電後の全固体電池で見られる性能低下の主要因は、正極層内の電極活物質と固体電解質の剥離、それに伴うリチウムイオンの移動抵抗の増加、正極層内の硫化物固体電解質の化学構造の変化であることを見いだした。
中でも、正極層内での固体電解質の化学構造変化が充放電後の全固体電池で見られる性能低下に深く影響することが分かった。具体的には、塩化物イオンの脱離による構造変化や硫化物固体電解質に酸化物イオンが導入されるなどの化学構造変化が全固体電池の性能劣化を招くことが判明した。
充放電後の全固体電池の性能低下の要因。(a)電子顕微鏡で観察された正極層内の電極活物質と固体電解質の剥離、(b)固体電解質の結晶構造(結晶構造描画ソフトVESTAにて作成)と(c)正極近傍の固体電解質で進行したと推察される化学構造変化[クリックで拡大] 出所:東レリサーチセンター同研究で試みた、さまざまな機器分析を適切に組み合わせる手法は、電池の特性変化を合理的に解析できる。そのため今回得られたノウハウや解析アプローチは、全固体電池材料の研究開発や製造工程の改善、全固体電池の早期実装化に貢献する。また同手法は、全固体電池の他、金属リチウム電池などの次世代電池にも展開できることから、新規蓄電デバイスの研究開発の進展にも役立つ。
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