マクセルは、全固体電池の電極技術を発展させ、作動上限温度を150℃に引き上げる技術の開発に成功した。
マクセルは2024年5月30日、全固体電池の電極技術を発展させ、作動上限温度を150℃に引き上げる技術の開発に成功したと発表した。
同社が2023年6月に量産開始したセラミックパッケージ型全固体電池「PSB401010H」は従来のリチウムイオン電池では使用できなかった高い温度域で使用可能なことから好評を得ている。多岐にわたる分野で採用やサンプル評価がされる中で、これまでにPSB401010Hの放電上限温度である125℃を超える用途での使用要望が多数寄せられた。具体的には、医療向け滅菌工程や半導体製造工程、車載用途など、高温環境下で設備周辺の温度やその他の情報をセンシング/モニタリングすることが必要な分野から使用要望があった。
こうした要望を受け、マクセルでは、全固体電池の使用用途を拡大すべく耐熱特性向上の開発を進めてきた。その中で、全固体電池の劣化メカニズムを解析することで、正極活物質と固体電解質との界面での副反応が高温における劣化の主要因であることを発見した。
これを受けマクセルは、電極の材料や配合などの電極設計を大幅に見直すことで、150℃の高温下で充放電を繰り返すサイクル試験において、放電電圧が1.0Vに低下するまでのサイクル数をPSB401010Hとの比較で約5倍に向上させることに成功した。
この技術を応用した製品開発を進めることで、高温下による電池寿命減少で発生していた頻繁な電池交換工数の削減につなげられる。高温下でのセンシング/モニタリングも行えるため、より高精度な設備制御を実現でき、生産の歩留まりや品質の向上が期待される。
また、マクセルでは、長寿命、高耐熱、高出力、大容量といった機能を持ち、高性能で信頼性が高い全固体電池の開発を進めている。今後も、全固体電池のラインアップを充実させるとともに、無線給電やエナジーハーベスティングなどの技術と全固体電池を組み合わせたモジュール製品の検討も進める。
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