東レリサーチセンターは、分析装置で冷媒として使用したヘリウムガスを再液化するシステムを滋賀事業所(滋賀県大津市)に導入した。
東レリサーチセンター(TRC)は2024年2月7日、分析装置で冷媒として使用したヘリウムガスを再液化するシステムを滋賀事業所(滋賀県大津市)に導入したと発表した。
再液化システムは、核磁気共鳴法(NMR)装置や液体ヘリウム容器から気化するヘリウムガスを回収ラインによりヘリウム再液化装置へ導き、液化することで再利用できるようにする。このシステムを用いることで、顧客が必要なときに極低温での分析(赤外分光法)や電子スピン共鳴法(ESR)などを提供できるようになった他、長期的な研究/技術開発や品質管理などを目的とした分析サービスも安定してリリース可能となった。
NMRとは、磁場を与えられた状態の原子核に外部から電磁波を照射したときに、原子核がそれぞれの化学的環境に応じた特定の電磁波を吸収する現象を観測することで、化合物の構造を推定する手法だ。NMRに使用される超電導磁石の超電導は、液体ヘリウム槽の中で超電導磁石が極低温に冷却されることで実現している。
赤外分光法とは赤外線を使って物質の構造を調べる分析法だ。物質に赤外線を当てると、特定の波長の赤外線が吸収され、その吸収スペクトルを分析することで、物質の構造や成分を特定できる。
ESRとは、不対電子が磁場中に置かれたときに生じる準位間の遷移を観測する分光分析だ。遷移金属イオン、欠陥、有機/高分子の遊離基、活性酸素などの同定、定量が可能だ。
ヘリウムは、-269℃という極低温で液体になり、高い熱伝導率も持つため、超低温冷却材や不活性ガスとして利用されるガスだ。医療分野の磁気共鳴画像(MRI)とNMR装置に用いられる超電導磁石の冷却や、光ファイバーや半導体の製造、精密機械の溶接、ロケットの打ち上げなど、多岐にわたる分野で利用されている。
主に天然ガスの採掘過程で得られる貴重な資源で、日本は100%輸入に頼っている。近年は天然ガスの採掘量の減少や世界的な需要の増加、特に2013年頃から米国が国策として始めた供給制限などにより、供給が不安定で、価格の高騰が続いている(2023年で2000年の9倍以上:財務省貿易統計)。限りある資源で、今後危機的な状況は好転する可能性は低いため、これを有効に活用する必要がある。
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