シーメンスは、イノベーションやレジリエンスなどを対象とし、総額で20億ユーロ(約3000億円)の投資戦略を発表した。その中で、新たにシンガポールに先進デジタル技術を盛り込んだハイテク工場を建設することも発表している。
ドイツのシーメンスは2023年6月15日、シンガポールで記者会見を開催し、イノベーションやレジリエンスなどを対象とし、工場の建設やイノベーションラボ、教育センターの設立など総額で20億ユーロ(約3000億円)の投資戦略を発表した。その中で、新たにシンガポールに先進デジタル技術を盛り込んだハイテク工場を建設することも発表している。
新たにシンガポールに建設する工場は、シーメンス独自のスマートファクトリーのノウハウを導入し、革新的なハードウェアを活用しつつデジタルツインを実現したものとなる予定だ。モノづくりのデジタル化における新たな基準を示すものとし、高度に自動化された製造工程を取り入れる計画だ。工場投資の総額は2億ユーロ(約300億円)となる見込みで、400人以上の雇用を創出する。
さらに、中国市場の成長に対応するため、成都のデジタル工場も拡張する。1億4000万ユーロ(11億元、約210億円)を投資し、400人の新規雇用を行う。同時に、シーメンスの中国での顧客企業の多くはデジタル化とハイテク製造の早期導入企業が多いため、深センの新しいデジタル研究開発イノベーションセンターへの投資も行う。その他、チェコ共和国のトゥルトノフでの生産を拡大する他、ドイツのフランクフルト、ホッヘンハイムのスイッチギア工場の拡張に3000万ユーロ(約46億円)の投資を行う。さらに、米国での鉄道旅客列車の需要拡大に対応するため、ノースカロライナ州レキシントンに新しい鉄道車両工場を建設するため2億2000万ドル(約308億円)を支出することも決定した。
R&Dについては、AI(人工知能)や産業用メタバースの研究開発に対し投資を5億ユーロ(約767億円)増額する計画(2023年度比)だとしている。シミュレーション、デジタルツイン、AI、パワーエレクトロニクスなどのコア技術におけるシーメンスの競争力強化や、オープンデジタルビジネスプラットフォーム「Siemens Xcelerator」の開発支援に重点を置く。
また、パートナーとの協業も強化する。既に発表しているが、マイクロソフトとの提携により、ChatGPTを利用した産業オートメーションのコード生成のスピードアップなどを推進する。さらに、NVIDIAと共同で、工場やインフラの設計、計画、生産、運用を改善するための産業用メタバースの構築に取り組んでいる。これらのさらなる強化を進めていく。
シーメンス 代表取締役社長兼CEOのRoland Busch(ローランド・ブッシュ)氏は「今回の投資は、現実世界とデジタル世界の融合というわれわれの戦略をさらに推進するためのものだ」と考えを述べている。
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