「今まさに、自動化とデジタル化の黄金時代が到来している」――。ドイツのSiemens(シーメンス)は世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2023年4月17〜21日)で最新の自動化、デジタル化技術を紹介し、現在の社会課題を背景に、産業界での導入が加速していると強調した。
「今まさに、自動化とデジタル化の黄金時代が到来している」――。ドイツのSiemens(シーメンス)は世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2023年4月17〜21日)で最新の自動化、デジタル化技術を紹介し、現在の社会課題を背景に、産業界での導入が加速していると強調した。また、ノルウェーのEV向け電池スタートアップFREYR Batteryとの協業も発表。シーメンスの技術によってギガファクトリーでの生産規模拡大を実現するとしている。
ハノーバーメッセ初日である2023年4月17日、同社が会場で行った記者会見では、同社取締役兼シーメンスデジタルインダストリーズCEO(最高経営責任者)のCedrik Neike(セドリック・ナイケ)氏が登壇。同氏は、「自動化、デジタル化が加速する時期に来ている」と語り、その理由として3つを挙げた。
まずは「高齢化社会」を背景とした労働者不足だ。同氏は2022年、G7諸国で離職者数が労働人口を初めて上回ったことに触れ、さらに「日本では1人が生まれたら2人が亡くなっている(出生数と死亡者数の比較から)。同じような問題はフランス、ドイツ、その他の国でも存在する」などと説明。「『自動化』は、雇用が破壊されることなどが懸念され、これまで常に、悪い印象を持たれていたが、ニーズが生まれた現在、『黄金時代』に入り、全てが肯定的に捉えられている」との見解を示した。
同氏が次に挙げたのが、世界的な製造拠点の自国回帰「リショアリング」の加速だ。ナイケ氏は、「米国の『IRA(Inflation Reduction Act)法』など、どの国もより多くの工業生産を国内に戻そうとしている」と説明。これによって多くの工場が各国で新設され、サプライチェーンの重要性もより高まるとした。そして、最後に挙げたのが、「地球温暖化」への対策だ。世界のエネルギー消費の37%が産業分野によるものといい、同氏は、「工場を増やし、生産量を増やしつつも環境汚染を少なくしなければならない。このためデジタル化、自動化のモチベーションが上がっているのだ」と述べた。
こうした状況の中で、ナイケ氏は、Fortune 500に入る企業の92%および自動車メーカー25社のうち24社がシーメンスのソフトウェアを利用していること、世界で稼働する産業機械の3台に1台が同社のコントローラーで動いていることなど、産業用ソフトウェア、オートメーションの分野で高い地位を築いていることを強調。また、「みな派手なIT(情報システム)が好きだが、現実ではほとんどのビジネスがOT(制御システム)で稼働している。シーメンスにはそれらの要素を橋渡しするソフトウェアもオートメーションもノウハウもある」とも述べ、OTとITとの融合をコンセプトとした同社の新ソリューション「Industrial Operations X」にも触れた。Industrial Operations Xは、ローコード、エッジ、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)を、オートメーション技術およびデジタルサービスと組み合わせたもので、「工場や生産ラインがより柔軟に、かつモジュール化され、顧客はボタンをクリックするだけで変化に対応できる」(同社)としている。
ナイケ氏は特に、毎年30%の成長率および、今後3〜5年で約2500億米ドルの投資が見込まれるというバッテリー製造業界を例に、同社の強みを示した。例えばセルの構造やモジュール、パッケージなどの全てを最適化するデジタルツインによるシミュレーションやAI駆動のロボットによるバッテリーの分解など、バッテリーの設計、生産、そしてリサイクルまでの全てに対応するソリューションを有すると説明した。
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