樋口氏は各事業領域における事業環境の状況と今後の見通しについて説明した。
アビオニクス事業については、COVID-19の影響で航空旅客需要は低迷が続いていたものの、現時点で新規機体発注数が既にコロナ禍前の水準以上に回復しており、市場環境の改善が見込まれるとした。ナローボディの生産数は回復傾向にあり、ワイドボディの生産数も遅れてはいるものの今後回復が予想されるという。
ナローボディは長距離航行のニーズが高まっており、コロナ禍で高まったエンターテインメント需要も増大していることから、IFE(InFlight Entertainment)搭載比率が向上している。このため、新製品である機内エンターテインメントシステム「Astrova」の引き合い増加が見込まれるとした。
「コロナ禍以前は、飛行機に機内Wi-Fiがあれば、後は搭乗者の持ち込んだデバイスで楽しむ時代になるのではと考えたこともあった。しかし、コロナ禍を経てエンターテインメント体験への期待値が上がり、機内のモニターの大画面で、あるいは自分のデバイスと連動させる形で両方楽しむということが求められるようになった。シートバックのモニターでないと、機内のEコマースや各種仕掛けは十分に機能しない」(樋口氏)
加えて、機器のテクニカルサポートなどの保守サービスにおける収益性向上や、機内Wi-Fiの需要増加に伴う通信領域での成長といったトピックも紹介した。樋口氏は「空の上ではユーザーのデバイスに対してブロードバンドが直接アクセスできない。イニシアチブが取れるエリアであり、当社のビジネスモデルを最大限に生かして事業展開を進めていく計画だ」と語った。
ブルーヨンダーについては、2023年5月10日の会見において、エンドツーエンドのSCM(サプライチェーンマネジメント)システム開発に向けて2億米ドル(約270億円)の投資を行うと発表している。さらに生成AI(人工知能)なども活用してソリューションの高度化を目指す。
樋口氏は「ソフトウェアビジネスは規模の経済の競争そのものだ。いかに早くドミナントを形成するかというスピードが重要だ。ソフトウェアそのものはもちろん、ビジネスモデルやシステムの仕組み、拡張性などをしっかりと構築したSaaS(Software as a Service)プラットフォームの開発と、カスタマーサクセスの差別化や収益性の向上に向けた投資を今後3年間で行う。ドミナント形成、成長を確実なものにする」と、改めて意気込みを見せた。
この他、プロセスオートメーション事業、メディアエンターテインメント事業、モバイルソリューションズ事業、現場ソリューションカンパニー事業ではオペレーション改革と生産性向上を進め、固定費率を2024年度までに2022年度比で2%削減することで事業の筋肉質化を図る。今後3年間で1000人規模の人員合理化も進めるとした。
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