続いては、PDMシステムの発展に関する視点です。筆者がもし、X社におけるPDMシステム導入のプロジェクトマネジャーだったとしたら、次のような構想をイメージすることでしょう(図1)。実は、この構想こそがPDMシステムの真の価値を発揮するために必要な道筋といえます。
多くの製造業では、生産管理システムを利用しています。このシステムは、設計工程以降で使用する部品表(BOM)の管理の他に、その部品表に関連した原価(購入費用、工数)や実績原価を入力し、予算と実績の検証/管理を行うことが可能です。また、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)システムと連携し、部品の見積依頼→発注処理→支払い処理を行うこともあります。
これら仕組みの源泉となる情報は、3D CADによって描かれた部品や組立図になります。PDMシステムにチェックインした設計データなどの情報は、正式な情報です。さらには履歴管理も行われています。PDMシステムを単に設計データの管理を行うだけのものだと捉えるのではなく、生産管理システムのような基幹システムのリソースとして有効活用していくことを目指すべきです。
Aさんの心の声 そういえば、出図やその後利用される部品表は、3D CADで作られているんだよな。3D CADから2D組立図を作成したときの部品表欄の内容が使われているんだっけ。
PDMシステムに入力したものを設計の最終成果物として考えるのであれば、PDMシステムに格納されている設計データそのものから部品表を作成したり、改訂が生じた場合には、廃版や改訂版として部品表で削除/挿入しながら運用したりした方がよさそうだな。
それに、3D CADを使っている設計部門以外でも設計データを閲覧したいという関係者もいる。そうした人たちには3Dビュワーを活用してもらおう。そうだ! 3Dビュワーでも生産管理システムから3D PDFが参照できると便利かもしれないぞ!!
これまで長期間にわたり、筆者の体験やメーカーからの助言に基づくお話をベースに、PDMシステムを用いた設計データ管理の考え方について解説してきました。
PDMシステムの構築は、PDMのことだけを考えるのではなく、設計手法から製造環境に至るまで、さまざまな観点で検討を行い、“正しいデータ管理”の実現を目指すべきです。そして、今回紹介した維持管理、発展についての視点も忘れずに、PDMシステム活用の価値を最大化していくことで、その効果はより大きなものになっていくはずです。
最後にあらためて、PDMシステムとは、
だと筆者は考えます。
PDMシステムによる運用を推進するためには、3D CADやPDMシステムの特性を理解するとともに、データベースに関する知識や理解も求められます。そのため、自身の学習だけでなく、メーカーのサポートなども有効活用すべきでしょう。
PDMシステムの構築から運用に至るまでの道のりは、決して楽なものではありませんが、最近では、自前でサーバを構築することなく、気軽に使用できるクラウド版のPDMシステムも登場しています。こうした新しい選択肢も視野に入れながら、ぜひPDMシステムの活用を検討してみてください。
PDMシステムを構築し、運用、維持、発展につなげていくことができれば、設計部門はもちろんのこと、それ以外の部門の人たちもその優位性に気が付くはずです。必ずやデジタルエンジニアリング環境の構築にとって重要な要素となることでしょう。 (連載完)
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