九州大学など4大学は、コラーゲンなどの過剰産生によって生じる臓器の線維化に、タンパク質VGLL3が関与していることを発見した。臓器を硬くし、病気を悪化させる線維化の治療法開発につながることが期待される。
九州大学は2023年2月8日、コラーゲンなどの過剰産生によって生じる臓器の線維化に、タンパク質VGLL3が関与していることを発表した。徳島大学、自治医科大学、兵庫医科大学との共同研究による成果だ。
ある種の病気になると、病気の臓器に出現する筋線維芽細胞がコラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質を過剰に産生し、臓器を硬くする「線維化」の状態になる。コラーゲンが過剰産生されると、筋線維芽細胞の周囲にコラーゲン線維として蓄積する。コラーゲン線維は硬いため、筋線維芽細胞が物理的な力を受け、これが刺激となってさらにコラーゲンが産生され、線維化が加速度的に進行する。
研究グループは、筋線維芽細胞が物理的な力を受けると、細胞内でタンパク質VGLL3が細胞質から核へ移行し、細胞外マトリックスタンパク質の産生を促すことを確認した。マウスを用いた実験では、VGLL3を持たないマウスは心筋梗塞後の心臓の線維化が軽減していた。
コラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質は、適量存在することで臓器に弾力やつやなどを与えている。しかし、過剰産生により線維化が生じると、臓器の機能が低下し、病気の悪化にも関与する。コロナウイルス感染後の肺線維症や心筋梗塞、肝硬変、慢性腎不全、難治性がんである膵臓がんなど、線維化はさまざまな病気で生じ、先進国の全ての死亡原因の約45%に関与することが知られている。
今回の研究で、線維化を招く細胞外マトリックスタンパク質の産生に、VGLL3が関与することが分かった。この研究成果をもとに、線維化の治療薬や治療法の開発が進むことが期待される。
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