東北大学は、歯根表面に存在する歯周組織の一部であるセメント質の物理的性質を模倣し、表面に無数のナノ突起が存在するチタンインプラントを開発した。ナノ突起が骨細胞を刺激することで、インプラントを支える骨の質が高まることが分かった。
東北大学は2022年9月8日、歯根表面に存在する歯周組織の一部であるセメント質の物理的性質を模倣し、表面に無数のナノ突起が存在するチタンインプラントを開発したと発表した。ナノ突起が骨細胞を刺激することで骨細胞同士の3次元ネットワーク形成が促進され、インプラントを支える骨の質が高められることが明らかになった。
骨細胞は、骨組織内で細胞同士を連結した3次元ネットワークを形成しており、骨代謝の活性度はこのネットワークの発達度と密接に関連している。今回の研究では、骨の代謝を活性化させることで、骨の質を高めるインプラント材料を作製した。
まず、セメント質の物理的性質を模倣したチタン表面を開発。その生体模倣チタンインプラントの表面にある無数のナノ突起が、骨細胞へ物理的な接触刺激を加えることで、細胞間連結に必要な細胞突起の形成を活性化することが分かった。
また、活性化された骨細胞が周囲の骨細胞に働きかけて、細胞間連結を促進することも判明。これらの現象は生体内で確認され、骨内に埋めた生体模倣チタンインプラントは、骨細胞の3次元ネットワークを発達させることで、骨の強度を増強することが示された。
このチタンナノ表面は、物理的刺激により体性幹細胞や免疫細胞の機能を制御し、組織再生の促進効果などが示されている。このことから、生物資源を必要とせず、物理的に細胞機能を最適化する多機能性インプラント材料の開発が期待される。
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