矢野経済研究所は、国内の医療情報システム市場に関する調査結果を発表した。2021年度の推計は、前年度比2.5%増の2744億9400万円で回復傾向を示した。電子カルテの中でもクラウド型電子カルテが存在感を高めており、今後の伸長が期待される。
矢野経済研究所は2022年9月7日、国内の医療情報システム(EMR、HER)市場に関する調査結果を発表した。
調査は、同年6〜8月に国内の医療情報システムベンダーを対象に実施した。パッケージソフトウェアやシステムインテグレーション、クラウドなどを対象に、事業者売上高ベースで医療情報システム市場を算出している。対象となる商品およびサービスには、電子カルテ、医事会計、医用画像管理システムなどが含まれる。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年度の国内医療情報システム市場規模は、前年度比3.8%減の2676億7000万円。2021年度の同市場規模は、回復傾向を示し、前年度比2.5%増の推計2744億9400万円となった。
病院や一般診療所では、業務効率化や情報を連携するために医療情報システムを導入している。さまざまなシステムの普及率が高まった結果、市場は新規導入からリプレイス中心となり、近年の市場規模は前年比1〜2%増で推移していた。
同研究所では将来の展望として、2022年度はコロナ禍前の2019年度をやや上回る水準まで回復し、2023年度以降も前年度比1%程度の低水準で増加すると予測する。
同市場の中心となっているのは電子カルテだ。その中でもクラウド型電子カルテ市場が伸長し、存在感を高めている。2010年に診療録の外部保存が解禁され、電子カルテ導入の初期費用や導入後の人的負担、災害時のデータ消失リスクなどを低減する、クラウド型への期待が高まっている。
クラウド型については今後、小規模病院や一般診療所など、電子カルテ未導入の施設が新規導入したり、多くの導入施設が電子カルテシステム更新時にクラウド型に切り替えたりといった、採用の拡大が予測される。
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