産業技術総合研究所は、酸化スズナノシートとMLの一種であるPCAを活用して、緊張によるストレスで皮膚から発生するストレスガスを識別するセンサーアレイを開発した。
産業技術総合研究所は2022年8月25日、ナノシート状酸化スズ粒子(酸化スズナノシート)とML(機械学習)の一種であるPCA(主成分分析)を活用して、緊張によるストレスで皮膚から発生するストレスガスを識別するセンサーアレイを開発したと発表した。
ストレスガスとは、緊張などストレス状態の体から放出される代謝物質ガスだ。今回開発したセンサーアレイは、ストレスガスの主成分の一種であるアリルメルカプタンを識別する。
ストレスガスの検知は、酸化スズで構成されるセンサー感応膜のナノ構造を制御することで可能とした。結晶成長時間の変化により4サイズの酸化スズナノシートからなる感応膜を作製したところ、成長の最も初期段階にあるセンサー感応膜がアリルメルカプタンに対して、約50ppmで約80と優れたセンサー応答値を示すことが明らかとなった。
ストレスガスと他のバイオマーカーガスを識別するため、4種類のセンサー感応膜を組み合わせてセンサーアレイを作製した。各種ガスに対する4種類のセンサー応答値をPCAにより解析したところ、ストレスガスが他のバイオマーカーと異なる位置にプロットされ、識別可能であることが示された。また、測定するガスを空気からストレスガスに変化させた際の応答値は5秒以内に大きく変化し、リアルタイムでのモニタリングが可能であることが示された。
ストレスガスのモニタリングは健康状態の把握や疾病予防に役立つとされるが、従来の分析法では大型装置が必要で測定時間が長いため、リアルタイム測定が困難だった。同研究所は今後、皮膚ガス中に含まれるストレスガスをモニタリングできるデバイスを開発するとしている。
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