日産自動車は2022年9月21日、空気酸化触媒活性種によるウイルス不活性化技術を開発したと発表した。ウイルス表面のタンパク質などを酸化させて変性、分解することでウイルスを不活性化させる。
日産自動車は2022年9月21日、空気酸化触媒活性種によるウイルス不活性化技術を開発したと発表した。ウイルス表面のタンパク質などを酸化させて変性、分解することでウイルスを不活性化させる。
発表した技術は、東北大学 薬学研究科、材料科学高等研究所、多元物質科学研究所などと共同で開発した。酸化させるのに通常は光照射が必要だが、開発技術は空気中の酸素を酸化剤として働かせることができるため常温の暗所でも効果を発揮できるという。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などのさまざまなウイルスの他、各種病原体、真菌(カビ)、細菌などを不活性化する効果が期待できるとしている。将来的には、空調や空気清浄機のフィルター、抗菌/抗ウイルス性の基材の他、マスクや医療用の繊維製品など幅広い応用を見込む。
開発技術で使用するのは有機ニトロキシルラジカル酸化触媒(ラジカル触媒)だ。触媒作用を向上させる物質(助触媒)と協働し、空気中の酸素を酸化剤としてさまざまな有機化合物を酸化させる。効果を検証した結果、ラジカル触媒の空気酸化によって生成されるオキソアンモニウムイオンが、ウイルス表面のタンパク質を酸化し不活性化することで、標的細胞への結合やウイルスの感染力を低下させることが確認された。また、新型コロナウイルスのオミクロン株に対し、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインを処理することで、受容体への結合活性が著しく低下することも分かった。
ラジカル触媒は自動車用塗料の高分子基材の他、車両の内外装の繊維材料や有機高分子材料に添加剤として使用されている。長期間にわたって光によるひび割れや脆化、退色などを抑制する効果が知られている。自動車でラジカル触媒を使ってきた日産自動車の技術や知見と、東北大学などが持つ医薬品開発技術や薬学技術、触媒調製技術、触媒性能評価技術を組み合わせることで、今回発表した技術の開発に至った。
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