「半固体電池」とはいったいどんな電池のことでしょう。今回は、そんな分かるようで分からない「固体電池」について、その材料構成を整理しながら解説していきたいと思います。
自動車メーカーを始めとするさまざまな企業が次世代電池の開発を進めています。例えば、日産自動車が2022年4月に全固体電池の開発状況について発表した中で、日産自動車副社長の中畔邦雄氏は「安全性などのメリットを生かすために半固体電池ではなく全固体電池の開発と実用化を優先する」と述べました。
ところで、ここでいう「半固体電池」とはいったいどんな電池のことでしょう。
昨今の電池に関する報道では「全固体電池」や「半固体電池」、あるいは単なる「固体電池」といった名称を目にする機会が増えてきています。さらに英語圏の報道や文献を見てみると「全固体」(all-solid)、「半固体」(semi-solid)のみならず「準固体」(quasi-solid)や「固液混合」(hybrid)など、似たような表現が混在しています。
今回は、そんな分かるようで分からない「固体電池」について、その材料構成を整理しながら解説していきたいと思います。
以前、本コラムでもご紹介した通り、従来のリチウムイオン電池には電解液という液体状の電解質が使用されています。電解液を構成する液体成分には可燃性の有機溶媒が用いられることが多いため、使用温度帯の制限や発火リスクなどの問題がつきまといます。
そういった電解液を使用することで生じる種々の問題を解決するため、電解質に液体材料ではなく固体材料を用いる場合、従来の液系電池と区別して「固体電池」と呼ばれることがあります。しかし先述の通り「固体電池」と名の付く電池の中にはさまざまな種類、構成のものが混在しています。
このように「固体電池」に関する名称が乱立している最大の要因は万人に通じる「明確な定義」が存在しないことです。
例えば「液体→半固体→準固体→全固体」という順に並べて液体成分の含有%によって(○○%以下の場合○○固体電池等)区分した名称にすべきであるという主張もあれば、固液共存状態のものは比率問わず全て「半固体」または「ハイブリッド」だという主張、あるいは明らかに液体成分を含んでいるにもかかわらず「全固体電池」であると主張している事例も見受けられるなど、非常に混迷を極めているのが現状です。
そのため、報道や文献の中で目にする「固体電池」が実際はどういったものであるのかは慎重に見定めていく必要があります。
今回のコラムの中では解説を分かりやすくするため、以下のように整理してみます。
ご覧の通り、この分け方の場合は半固体電池に区分される電池の材料構成が最も自由度が高く、液体と固体を混ぜて用いてさえいればどんな構成でも「半固体電池」と呼べることになります。そんな構成自由度の高い「半固体電池」ですが、(1)ゲルポリマー型(2)クレイ型(3)液添加型の3つに大別することができると考えています。
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