「熱」と「流れ」を電気回路に置き換えてモデリングする:1Dモデリングの勘所(5)(4/4 ページ)
図16に、流路網モデルの計算式例を示す。計算式は閉回路をどのように定義するかによって種々存在するが、どのように定義しても答えは当然同じとなる。図16では、閉回路として(1)と(2)を考えた。この場合、求めたいのが流量Q、Q1、Q2と、圧力P1、P2の5つであり、方程式も5つ(圧力P1、P2の定義式は図16では省略している)あるので解くことができる。実際の流れでは、流路抵抗は順流と逆流で異なる。例えば、拡大管の場合には、逆流すると縮小管となるため、流れの方向に応じて適切な管路抵抗を定義する必要がある。
図16 流体網モデルの計算式[クリックで拡大]
図17に流路抵抗が流れの方向で変わる場合の計算式の例を示す。
図17 流体網モデルの計算式(流路抵抗が流れの方向で変わる場合)[クリックで拡大]
図18に図17の流路網モデルの計算例を示す。流路抵抗も変数となるため、流路抵抗の5箇所分が増えて変数も総数10に、方程式の数も10となっている。計算例として、2つの圧力発生源の特性が同じで、回転数を変化させた場合を考える。2台の圧力発生源の回転数が同じn1=1、n2=1のバランス運転時には、各部の流量はQ=0.66、Q1=0.33、Q2=0.33となり、圧力発生源の発生流量は両者で同じとなる。一方、回転数をn1=10、n2=1と2台でアンバランス運転した場合には、Q=3.23、Q1=4.64、Q2=−1.41となり、圧力発生源の発生流量が両者で異なるだけではなく、回転数が低い圧力発生源2から流れが逆流していることが分かる。
図18 図17の流体網モデルの計算例[クリックで拡大]
次回は「音振動」のモデリングに関して、一般的な方法論を述べるとともに、エネルギーの流れで捉える方法についても紹介する。 (次回へ続く)
⇒連載バックナンバーはこちら
- 1Dモデリングの方法にもさまざまなアプローチがある
「1Dモデリング」に関する連載。連載第4回では、本題である1Dモデリングの方法を取り上げる。まず、1Dモデリングの方法には大きく「モデル生成」「低次元化モデリング」「類推モデリング」の3つのアプローチがあることを説明。特に本稿では1Dモデリング固有の考え方としての類推モデリングについて詳しく解説する。
- 0Dモデリングとは? 理論・経験に基づく理論式・経験則が究極の1Dモデリング!?
「1Dモデリング」に関する連載。連載第3回は、理論・経験に基づく理論式・経験則が究極の1Dモデリングであることを、0Dモデリングの定義、3Dモデリングとの関係、幾つかの事例を通して説明する。また、理論・理論式を考えるに当たって重要な“単位”に関して、なぜ単位が必要なのかその経緯も含めて紹介する。
- 1Dモデリングとは? モデリングをさまざまな視点から捉えることで考える
「1Dモデリング」に関する連載。連載第2回は、モデリングをその表現方法から2種類の“3つのモデリング”に分けて考える。次に1Dモデリングが必要となる背景について、1DCAEとMBDという2つの製品開発の考え方を紹介し、これらと1Dモデリングの関係を示す。さらに、リバース1DCAEと1DCAEを通して、より具体的に1Dモデリングのイメージを明らかにする。以上を通して、最後に“1Dモデリングとは”について考察する。
- モデリングとは何か? 設計プロセスと製品設計を通して考える
「1Dモデリング」に関する連載。連載第1回は、いきなり1Dモデリングの話に入るのではなく、そもそもモデリングとは何なのか? について考えることから始めたい。ものづくり(設計)のプロセス、製品そのものを構成する要因を分析することにより、モデリングとは何かを明らかにしていく。
- なぜ今デライトデザインなのか? ものづくりの歴史も振り返りながら考える
「デライトデザイン」について解説する連載。第1回では「なぜ今デライトデザインなのか?」について、ものづくりの変遷を通して考え、これに関する問題提起と、その解決策として“価値づくり”なるものを提案する。この価値を生み出す考え方、手法こそがデライトデザインなのである。
- デライトデザインとは? 3つのデザイン、類似の考え方を通して読み解く
「デライトデザイン」について解説する連載。第2回では、デライトデザインとは? について考える。まず、設計とデザインの違いについて触れ、ユーザーが製品に期待する3つの品質に基づくデザインの関係性にも言及する。さらにデライトデザインを実行する際に参考となる考え方や手法を紹介するとともに、DfXについて説明し、デライトデザインの実践に欠かせない要件を明確にする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.