人とロボットの協働でマスカスタム生産、デジタルによる柔軟性を示した三菱電機2022国際ロボット展

三菱電機は、「2022国際ロボット展(iREX2022)」(東京ビッグサイト、2022年3月9〜12日)に出展し、同社が描くロボットによる工場の理想像を示すマスカスタマイゼーションを実現した自動化ラインのデモ展示を行った。

» 2022年03月10日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 三菱電機は、「2022国際ロボット展(iREX2022)」(東京ビッグサイト、2022年3月9〜12日)に出展し、同社が描くロボットによる工場の理想像を示すマスカスタマイゼーションを実現した自動化ラインのデモ展示を行った。

photo iREX2022の三菱電機ブースの様子[クリックで拡大]

人とロボットの協働でマスカスタマイゼーションを実現

 三菱電機はiREX2022の出展テーマを「ロボティクスで、ものづくりのDXを理想のカタチに」としており、メインデモ展示ではロボットとデジタル技術を組み合わせた理想の工場像を示した。具体的にはロボットと人が協調し、来場者の注文に応じ、ワイヤレスマウスをマスカスタマイゼーションで製造する様子を披露した。

 まず来場者は、ブースのタッチパネルでワイヤレスマウスの仕様を選択する。4種類のベースとなるワイヤレスマウスから1つを選び、その後、刻印の有無や、電池を入れるか別で梱包するかなどのオプションを選択する。これらの仕様を確定して発注するとリアルタイムで受注状況を確認しながら製造を開始する。

 製造工程は、必要な部品をピックアップして配膳するキッティング工程は人と協働ロボットが協調して作業する。三菱電機の協働ロボットとAGV(無人搬送車)を組み合わせたモバイル型ロボットが必要な部品のピックアップを行う。また、この協働ロボットのアームの経路設定には、出資関係のあるRealtime Roboticsの技術を採用し、障害物などがあってもそれを避けて自然に作業を続けることができることを紹介している。

タッチパネルによる注文システム(左)と協働ロボットによるキッティングの様子(右)[クリックで拡大]

 キッティングを行った後は、5台の産業用ロボットを用いて、基礎組み立て、カバー組み立て、ネジ締め、部品組み立て、刻印・検査という工程を自動で行っている。これらは、台車で移動がしやすい形としており、柔軟に工程の入れ替えなどを行うことを想定したという。また、柵はないものの、セーフティ機構を用意し、ロボット近くの赤いカーペットを敷いたゾーンに人が入ると停止し、その手前の黄色のカーペットを敷いたゾーンではロボットの作業がゆっくりになる形とした。これにより人が近づけば全面的に停止するのではなく、安全性と生産性のバランスを取った形を示している。その後、梱包工程では人が確認しながら梱包を行う形となっている。

photo ロボットによる全自動組み立ての様子[クリックで拡大]

 三菱電機ではこのデモラインを通じ、ロボットおよび自動化技術を訴求する一方で、受注への柔軟な対応を実現するデジタル技術を強く訴えた。まずこれらの製造ラインのデータを一元管理する仕組みとして2021年3月に発売したSCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)ソフトウェア「GENESIS64」を活用。来場者が登録する受注データから人気のある商品やオプションの組み合わせを分析する。そのデータを基に、3Dシミュレーションツールである「Gemini」へフィードバックし、工程のシミュレーションを行い、ラインの検証や最適な工程を検討する仕組みとしている。製造工程におけるロボットが移動式台車に搭載されたものとしたのは、こうしたシミュレーション結果による入れ替えをイメージしたものだという。

 さらに、参考出展として、最適なデータ分析をAI(人工知能)が支援するソフトウェア「MaiLab」を紹介。データ分析の手法選択が難しい場合でも、AIが最適なデータ分析手法を推薦してくれることで、求める成果に容易にたどり着くことができる。

 三菱電機 名古屋製作所 ロボット製造部長の大塚亨氏は「ロボット単体での機能や性能の向上は進めていくが、それだけでは製造現場側が考える『ありたい姿』は満たせない。三菱電機はロボットを含むさまざまな製造現場の機器やデジタルソリューションを展開しており、これらを組み合わせることで実現できる新たなモノづくりの価値を示し、その中でロボットの利用領域を広げていきたい」と考えを述べている。

ティーチングの負荷を大きく低減する複合技術

 これらのメイン展示に加え2022年2月に発表したティーチング(教示)の負荷を大きく低減した複合技術「ティーチングレスロボットシステム技術」を紹介した。これは、さまざまなAI技術などを用い「プログラム生成・調整容易化」「ロボット動作の自動高速化」の2つを実現したものだ。

 3次元ビジョンセンサーにより周辺環境やロボットの手元を簡単に認識し、3次元データでの環境認識を実現する技術や、「どこ」に「何個」というように選択するだけでプログラム生成を簡単に行える技術、これらの指示を音声で行える技術、作業指示完了後にAR(拡張現実)上でロボットの動きの確認を行える技術、ロボット動作の始点と終点を示せば自動で最適経路を生成する技術などを紹介。デモでは、お弁当のトレイに唐揚げを自動配膳する仕組みを紹介。認識の難しい唐揚げを、ばら積み状態からピックアップし、弁当トレイの最適な位置に配置できる仕組みを簡単に構築できることを訴えた。

photo ティーチングレスロボットシステム技術を食品用途で活用したデモの様子。認識の難しい唐揚げのばら積みピックアップを実演している[クリックで拡大]

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