成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第14回では、「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介します。
スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ない課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介しています。第14回となる今回は、「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介していきます。
本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。
従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに訪問し、さまざまな課題に立ち向かいます。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
さて、前回のおさらいです。第13回の「コロナ禍で進んだ『リモート工場』、何ができて何ができないのか」では、コロナ禍でクローズアップされた「生産のリモート対応」についてポイントや事例について紹介しました。
海外工場のサポートを国内からリモートでできないかという矢面さんに対して、印出さんが使い方の事例を紹介しました。まずシンプルな使い方として紹介したのが、製造現場とのWeb会議での接続でしたね。
すごくシンプルなものだと、製造現場とその他の関係者をWeb会議でつなぐというものかしら。まさに現場にいるかのように話をしながら、現場の問題箇所を見せて、進めていくという形ね。
さらに一歩進めた形として、これらのリモートコミュニケーションの土台として、スマートファクトリー化で進む現場の装置や機械の情報の見える化で得られた情報を共有するということが挙げられていました。
通常、現場で不具合解決のために見ているものや感じているものが、何を根拠としているのかを確認することが大事ね。そのデータを共有する仕組みが構築できれば、要因特定もリモートで行える部分も増やしていけるわ。
一方で、リモート化が難しい部分については、原因が特定できない問題を解き明かす作業に非常に時間がかかるということが説明されていました。
まずは不具合の起きそうな相関性がある項目を洗い出す必要があって、そこには現場担当者の知見が大きく関わってくるの。現場力がある意味で反映される領域だと思うわ。それでも、やっぱり現地に人が入った方が早く解決できることもまだまだ多く、時間がかかるという問題もあるわね。
また、製品の持つ価値が人の感性に関わる領域である場合についても、データで表現しきれず、リモートでも説明が難しいことから、課題解決が難しい領域だとされています。
製品の求める品質レベルが、公差など数値で示される項目だけでなく、人の感性に関わるような効果を期待する場合は、リモートだけで解決するのは難しいわね。官能検査などが求められるところね。数値的には満たしていて、現場で「OKだ」と思っても、出てきた製品が水準に達していないという場合もあるし、その違いをリモートで示せるデータだけでは説明しきれないから。
さて、今回は産業用ロボットと人手の間で「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介していきたいと思います。
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