次は、せん断応力とせん断ひずみの積を考えてみましょう。図5は1辺の長さがLの立方体に、せん断荷重が作用している場合です。上から見た面積AはL2です。
立方体の上の面が荷重fを受けている最中、荷重fは時々刻々と増加することは前述したことと同じなので、荷重がなす仕事量Wは式4で表されます。
立方体に発生するせん断応力τは、式9で表されます。
立方体の上面の変位ΔLは、式10で表されます。
式9と式10を、式4に代入しましょう。
立方体の体積はL3=ALなので、立方体に蓄えられる単位体積当たりの仕事量は式12で表され、応力最終値とひずみ最終値の積の半分になります。
引張荷重とせん断荷重が同時に物体に作用したときに、物体内の微小立方体(体積Δv)に蓄えられる単位体積当たりの仕事量は式13で表されます。
ここで、hは2次元問題としたときの物体の厚さ、Δsは微小面積です。
本当はテンソルで表すべきなのですが、応力とひずみを式14のようにベクトルで表します。
単位体積当たりの仕事量は式15と表記できます。
物体全体に蓄えられる仕事量Wは、2次元問題に対しては式16で表されます。
ちょっと待ってください。密度法では少し異なります。式13は単位体積当たりの仕事量でした。一方、連載第4回で密度法は「物体が軽石のようにスカスカだ」と説明しました。式16のh dsは軽石の見掛けの体積であって、真の体積ではありません。よって、積分は「単位体積当たりの仕事量×真の体積」にしなければなりません。密度法の定義から、式16を式17のように書き換えます。
平均コンプライアンス、つまり外力がなした仕事量Cと物体全体に蓄えられる仕事量Wは等しくならなければならないため、式18が成立します。
平均コンプライアンス最小化問題は、物体に蓄えられる仕事量(エネルギー)最小化問題となり、以下のように解釈できます。
式18の左辺を使うか右辺を使うかは分かれ道です。左辺を選ぶと個々のρiの大小がCに及ぼす影響、つまり感度を求めることになり有限要素法ソフトを自作しなければなりません。一方、右辺を選ぶと個々のρiの大小がWに及ぼす影響、つまり感度を求めることは、LISAの出力ファイルからできそうです。この手で行きましょう。
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