デジタルツインを実現するCAEの真価

トポロジー最適化 〜密度法の定式化〜フリーFEMソフトとExcelマクロで形状最適化(5)(4/5 ページ)

» 2022年03月08日 10時00分 公開

密度ρiの導入と有限要素法ソフト「LISA」との相性

 密度法ではヤング率を次式で定義します。添字iはi番目の要素という意味です。密度が小さいとヤング率も小さくなり、密度が1のときヤング率は元の材料のヤング率Eoに等しくなります。これをラグランジュの未定乗数法による式に導入しましょう。

式33 式33

 上式のヤング率を有限要素法ソフトに入力したときの、ひずみと応力がどうなるかを考察します。ここでは話を簡単にするため、図7に示す平面応力三角形要素を使います。

平面応力三角形要素 図7 平面応力三角形要素[クリックで拡大]

 荷重ベクトル{fi}、変位ベクトル{ui}とそれらを関連付ける剛性マトリクス[ki]を以下に示します。ここでのiは図7のi節点ではなく要素番号です。

式34 式34
式35 式35

 連載第4回の剛性マトリクスの式を以下に示します。

式36 式36

 式33から、素材のヤング率はEo、それぞれの要素の最適化後のヤング率はEiなので、ヤング率Eoを使った剛性マトリクス[ki(Eo)]は式37、ヤング率Eiを使った剛性マトリクス[ki(Ei)]は式38となります。

式37 式37
式38 式38

 ヤング率としてEoを使った場合と、Eiを使った場合のひずみを比較してみましょう。まず、Eoを使った場合です。式35を左から[ki(Eo)]−1を掛けます。肩の「−1」は逆マトリクスを意味します。

式39 式39

 変位ベクトルからひずみを求めます。連載第4回で出てきた、変位−ひずみマトリクス[B]を使います。

式40 式40

 今度は、Eiを使った場合です。式35を左から[ki(E)]−1を掛けます。

式41 式41

 そして、式38を代入します。

式42 式42

 変位−ひずみマトリクス[B]は、要素の形状で決まるのでヤング率が変わっても変化はありません。Eiを使った場合のひずみは次式となります。

式43 式43

 ヤング率Ei=ρinEoを使った場合、ひずみはヤング率Eoを使った場合の「1/ρin」倍になります。ρiは0〜1の実数なのでひずみは大きくなります。そりゃそうですね。ヤング率が小さくなったら変形は大きくなって、ひずみも大きくなります。

 応力はどうでしょうか。調べてみましょう。連載第4回で出てきた応力−ひずみマトリクス[D]を使います。ヤング率がEoの場合の応力は式44で表されます。

式44 式44

 ヤング率がEiの場合は以下となります。

式45 式45

 式43を代入しましょう。

式46 式46

 式44式46は等しくなりました。応力はヤング率が変わっても変化はありません。静定はりの曲げモーメントは形状と荷重だけで決まるので、ヤング率が変わっても曲げ応力は変わらないのと同じですね。

 ヤング率を変えても応力が変わらない性質を利用しましょう。有限要素法ソフトLISAが出力する応力値を使って密度法で最適化問題を解くとき、式33で示したようにヤング率をいろいろと変化させるのですが、ヤング率を変えても目的関数の元となる応力値は変わりません。よって、LISAが出力する応力値をそのまま使うことができます。

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