トヨタ自動車がEVを含む電動車の展開について大々的に発表したのは2017年だった。当初は2030年にHEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、EV、FCV(燃料電池車)の合計で550万台、このうちEVとFCVで100万台と見込んでおり、EVのモデル数については2020年代前半にグローバルで10車種以上と想定していた。2021年に入り、これらの見通しが大きく引き上げられた。
EVの車種数について2021年4月の時点では「2025年までに15車種」と発表。販売台数については、「EVとFCVで2030年に合計200万台」と2021年5月に公表していた。電池の投資計画については2021年9月に発表したばかりだった。こうした見通しが、今回の発表でさらに上方修正された格好だ。
発表時期 | 販売 | 比率 |
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今回 | 2030年にグローバルでEV350万台 | - |
(レクサス)2030年にEV100万台 | (レクサス)2030年に欧州、北米、中国でEV100%、2035年にグローバルでEV100% | |
2021年12月2日 | - | 2035年に西欧での販売は全てゼロエミッション車 |
2021年5月 | 2030年にHEV、PHEV、EV、FCV合計で800万台、このうちEVとFCVで200万台 | EVとFCVの比率は2030年に日本で10%。北米で15%。欧州で40%、2035年に中国で50% |
2017年 | 2030年にHEV、PHEV、EV、FCVの合計で550万台、このうちEVとFCVで100万台 | 2030年に販売の50%以上がHEV、PHEV、EV、FCV |
発表時期 | モデル数 |
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今回 | 2030年までにEV30車種 |
(レクサス)2030年までに全てのカテゴリーでEVのフルラインアップ | |
2021年4月 | 2025年までにEV15車種(うち7車種がbZシリーズ)、2025年にHEV、PHEV、EV、FCVの合計で70車種 |
2017年 | 2025年ごろにグローバルで販売する全車種が何らかの電動車(エンジンのみで走る車種がゼロ)、2020年代前半にグローバルで10車種以上のEV |
説明会の中で「EV350万台で十分なのか」と問われ、トヨタ自動車 CTOの前田昌彦氏は「状況に合わせてアジャイルに戦略的にやっていく。消費者にとってのEVの利便性を考えると、税制、有料道路の通行料金や駐車料金などの優遇のように自動車メーカーだけではコントロールできない部分がある。バランスを見ながら少しずつ進めていく状況は避けられないので、いろいろな準備をしていく」とコメントした。
電動車戦略を上方修正したのはトヨタ自動車だけではない。ルノーは2021年5月に2030年に新車販売の9割を、HEVを含む電動車にすると発表した後、同年6月には2030年の新車販売の9割をEVにすると計画を改めた。トヨタ自動車と同様に短期間での計画見直しとなった。
メルセデス・ベンツは2019年時点の計画では2030年までに新車販売の50%以上をPHEVやEVにする方針だったが、2021年7月には「2022年までに市場投入する全セグメントでEVを提供する」と発表。2025年からは車両のプラットフォームをEV向けのみとし、市場動向次第では2030年に新車を全てEVにすることも視野に入れていると表明した。
ホンダも以前の計画では2030年までにグローバルでの四輪車販売台数の3分の2を電動車にする方針で、内訳はHEVとPHEVで50%以上、FCVとEVで15%程度としていた。2021年4月に、2035年までに日米中のEVとFCVの比率を80%以上に引き上げる新たな目標を発表。さらに2040年にグローバル販売の100%をEVとFCVとする方針だ。
こうした急激なEVシフトの背景には、排出削減に対する厳しい要請がある。EUの欧州委員会は、2035年から乗用車や小型商用車の平均CO2排出量を2021年時点の目標値から100%削減するというCO2排出基準の案を発表した。実質的にエンジンの搭載を禁じる内容であるため、欧州自動車工業会(ACEA)や欧州自動車部品工業会(CLEPA)が懸念を示し、代替燃料を活用する可能性の検討や、HEVのCO2排出削減効果を見直すよう訴えている。
また、「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、主要市場で2035年まで、世界全体では2040年までに、乗用車や商用バンの新車販売全てをゼロエミッション車とする宣言が掲げられた。宣言に法的拘束力はなく、日本、米国、ドイツ、フランス、中国は参加しなかったが、フォード、GM(General Motors)、ジャガーランドローバー、メルセデス・ベンツ、ボルボカーズ、BYDなどが宣言に賛同した。
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