S耐(エスタイ)と呼ばれるレースカテゴリーが日本に存在する。正式名称は「スーパー耐久シリーズ」。「スーパーGT」「スーパーフォーミュラ」と比べるとマイナー感は否めないが、市販車をベースにしたレースマシンで戦う国内最高峰の耐久レースシリーズとなっている。
S耐(エスタイ)と呼ばれるレースカテゴリーが日本に存在する。正式名称は「スーパー耐久シリーズ」。「スーパーGT」「スーパーフォーミュラ」と比べるとマイナー感は否めないが、市販車をベースにしたレースマシンで戦う国内最高峰の耐久レースシリーズとして知られている。
2021年5月23日から24日にかけて富士スピードウェイ(静岡県小山町)で行われた24時間レースには、トヨタ自動車が水素を燃料とする世界初のレースマシンで参戦。多くのマスコミがサーキットに押し寄せるなど脚光を浴びたが、水素エンジン車が走ったこのレースこそS耐なのだ。「偉大なる草レース」と称されるS耐。耐久レースという過酷な現場が自動車メーカーをも引き付けるレースカテゴリーへと成長している。
S耐の特徴は、世界のスーパースポーツカーから排気量1500CC以下のコンパクトカーまで多彩なレースマシンが混走し、アマチュアドライバーとプロドライバーが同じ土俵で戦うことにある。1991年に始まった「N1耐久シリーズ」を前身とし、実に30年の歴史を持つ日本最大の耐久レースシリーズなのだ。
N1耐久シリーズの「N1」とは日本自動車連盟(JAF)が規定した車両規則のこと。改造範囲が限定され、限りなく市販車に近いレースマシンを規定するものだった。1995年にはN1規則の変更に伴いシリーズ名称を「スーパーN1耐久」に変更。さらに1998年には独自の車両規則を導入したことから、現在のシリーズ名称であるスーパー耐久シリーズに変更した経緯をもつ。
シリーズ名称は幾度か変更しているものの、市販車に近いマシンで戦うレースカテゴリーであることに変わりはない。今シーズンからは車両規格やエンジン排気量、駆動方式などに応じて9クラスに分類されており、各クラスでは多彩な車種が参戦している。
レースマシンの車両規格を適用したクラスが「ST-X」「ST-Z」「ST-TCR」の3クラスだ。最上位のST-Xは、国際自動車連盟(FIA)が規定するGT3規則に準拠したマシンが出場できる。現在、同クラスにはポルシェ「GT3R」やアウディ「R8 LMS」、アストンマーチン「ヴァンテージAMR GT3」、マクラーレン「720S GT3」といった海外勢に加え、日産自動車「GT-R NISMO GT3」、レクサス「RC F GT3」、ホンダ「NSX-GT3」が参戦している。
ST-ZはGT4規格にのっとったマシンが参戦可能だ。日系自動車メーカーのGT4マシンはトヨタ「GRスープラ」に限られるため、このクラスの大半は欧州メーカーのGTマシンが占める状態となっている。メルセデスAMGやBMW、ポルシェ、アウディ、アストンマーチンのGT4マシンにGRスープラが加わる。
ST-TCRはFIAのツーリングカー規則に基づいたクラス。参戦台数は少ないが、ホンダ「シビック タイプR TCR」などが参加している。
一方、市販車を改造したクラスとしては、排気量などに応じて「ST-1」「ST-2」「ST-3」「ST-4」「ST-5」が設定されている。例えば下位クラスのST-5では排気量1500CC以下の車両が参戦できるため、ホンダ「フィット」やマツダ「デミオ」など、一見レースとは関係なさそうなコンパクトカーも出場している。アマチュアドライバーも参加できるハードルの低さも、S耐の根強い人気を支えているといえる。
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