東京の水辺空間に“新しい庭”を、3D技術を駆使した「みらい作庭記」3Dプリンタニュース

JR東日本は複合施設「ウォーターズ竹芝」の芝生広場において、水辺空間に“新しい庭”を創造する取り組みを開始した。慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 田中浩也研究室と連携したプロジェクトで、最新のデザインスキームと3Dプリンティング技術を活用した新たな庭づくりを進める。

» 2021年12月06日 06時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 東日本旅客鉄道(JR東日本)は2021年12月2日、2020年10月に開業した複合施設「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」(東京都港区)のプラザ(芝生広場)において、水辺空間に“新しい庭”を創造する取り組みを開始したことを発表した。

 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 田中浩也研究室と連携したプロジェクトで、同研究室の学生とともに、最新のデザインスキームと3Dプリンティング技術を活用した新たな庭づくりを進める。その活動の第1弾として、子供向けに制作された実際に遊ぶことができる不思議なオブジェ(遊具)を展示する「みらい作庭記 -2021 Winter-」を、同年12月8〜14日まで開催する(開催時間は10〜16時/入場無料)。

「みらい作庭記 -2021 Winter-」期間中の芝生広場のイメージ 「みらい作庭記 -2021 Winter-」期間中の芝生広場のイメージ[クリックで拡大] 出所:JR東日本

 平安時代に書かれた日本最古の庭園書「作庭記」を手本とし、作庭の基本的な作法を継承しながら、3Dプリンタで制作した特殊な構造を持つ遊具を、自然景観や周辺環境との関係を大切にしながら芝生広場上に配置、構成する。

リアル空間と3Dバーチャル空間で作庭

 今回、3Dプリンタで制作されたオブジェは、慶應義塾大学 環境情報学部4年の木下里奈氏が制作した「滴脈の間」と、同4年の矢崎友佳子氏が制作した「遊具と街具のあいだ」の2種類である。

 「滴脈の間」は、重力が生み出す曲線を用いた風で動く柔らかな構造体で、生分解性プラスチックを使用し、少ない材料で広い空間を覆える構造が特徴。波や山脈を想起させる有機的な外観を備え、実際に中に入ったり、くぐり抜けたりして遊ぶことが可能だ。

「滴脈の間」 「滴脈の間」[クリックで拡大] 出所:JR東日本

 一方、「遊具と街具のあいだ」は、異なる性質を備えたブロック状の街具で、これらを組み合わせることで、場所や人の振る舞いに対応した心地よい使い方を見つけ出せるというもの。会場では実際に座ったり、手に持ったり、積み上げたりして自由に楽しむことができる。

「遊具と街具のあいだ」 「遊具と街具のあいだ」[クリックで拡大] 出所:JR東日本

 なお、オブジェの配置位置は、離散的な石庭の形式から学びつつ、作品相互の見え掛かりと互いの影響範囲からコンピュータで最適計算を行って決定し、毎朝並び直されるという。

 また、展示期間中、こうしたリアルの場に加えて、デジタル技術を活用した3Dバーチャル空間「マチカド(MachiCAD)」も同時に展開する。マチカドは田中浩也研究室が独自開発したシステムをベースにしたもので、Webブラウザからウォーターズ竹芝の3Dバーチャル空間にアクセスし、仮想的に芝生広場上にオブジェ(ブロック)を配置するなどして庭づくりを楽しむことができる。

3Dバーチャル空間「マチカド(MachiCAD)」 3Dバーチャル空間「マチカド(MachiCAD)」[クリックで拡大] 出所:JR東日本

 ウォーターズ竹芝を中心とした街づくりを推進する竹芝タウンデザインと田中浩也研究室は、引き続き、東京都心に位置する“水辺の複合施設”というウォーターズ竹芝の特性を最大限に生かし、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックなどの活用を進めながら、脱炭素社会、資源循環社会に貢献するモノづくりを連携して推進するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)の実現やその啓発にも貢献していく考えを示す。

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