3×3×3mの超大型造形が可能な3Dプリンタでリサイクルプラ製ベンチを製作:3Dプリンタニュース
エス.ラボは、最大造形サイズが3000×3000×3000mmの超大型ペレット式3Dプリンタ「茶室」(開発名)を開発。同時に、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ、積彩と共同で、茶室と材料にリサイクルプラスチックを用いた大型プラスチック製ベンチの造形にも成功した。
エス.ラボは2021年7月9日、超大型3Dプリンタ「茶室」(開発名)を開発したことを発表した。最大造形サイズが3000×3000×3000mmで、材料にペレット状の樹脂を使用する材料押し出し方式の3Dプリンタとなる。
エス.ラボが開発した超大型3Dプリンタ「茶室」(開発名) ※出典:エス.ラボ [クリックで拡大]
また、同社は茶室の開発とともに、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ(以下、SFC研究所)、積彩と共同で、茶室と材料にリサイクルプラスチックを用いた大型プラスチック製ベンチの造形にも成功。2800×1200×1100mmの大型のベンチをおよそ24時間で造形(ベンチを縦向きに起こした状態で造形)した。完成したベンチは、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス内に仮設置し、試験運用の結果、大人4人程度が問題なく座れる強度を確認できたとしている。
エス.ラボ、SFC研究所、積彩で共同製作した大型プラスチック製ベンチ ※出典:エス.ラボ [クリックで拡大]
プラスチック樹脂を用いた材料押し出し方式の3Dプリンタとしては、最大造形サイズが2m3(立法メートル)を超える機種は世界的に見ても少なく、今回の装置開発および(ベンチの)造形は「世界最大級の事例となる」(同社調べ)。
大型ベンチの共同製作では、SFC研究所が材料検証と造形試作を、積彩がベンチの3Dモデル設計と配色設計をそれぞれ担当した。ベンチはらせん形状をしており、座面が斜めに区切られ、利用者同士が適度な距離感で座ることができる。また、小さな子供が遊具のようにして遊ぶことも可能となっている。特徴的なまだら模様のデザインは、造形時に意図的に配色をコントロールすることで作り出しているという。
今後は、大型造形物の試作や形状確認の他、今回の大型ベンチのような最終製品の造形に茶室を活用していく予定だとする。
⇒ その他の「3Dプリンタ」関連ニュースはこちら
- コロナ禍で生まれた3Dプリンタ活用の流れが、デジタル製造を加速
コロナ禍で、あらためてその価値が再認識された3Dプリンティング/アディティブマニュファクチャリング。ニューノーマルの時代に向け、部品調達先や生産拠点の分散化の流れが加速していく中、サプライチェーンに回復力と柔軟性をもたらす存在として、その活用に大きな期待が寄せられている。2021年以降その動きはさらに加速し、産業界におけるデジタル製造の発展を後押ししていくとみられる。
- 3Dプリンタの可能性を引き上げる材料×構造、メカニカル・メタマテリアルに注目
単なる試作やパーツ製作の範囲を超えたさらなる3Dプリンタ活用のためには、「造形方式」「材料」「構造」の3つの進化が不可欠。これら要素が掛け合わさることで、一体どのようなことが実現可能となるのか。本稿では“材料×構造”の視点から、2020年以降で見えてくるであろう景色を想像してみたい。
- いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。
- 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。
- 3Dプリンティングの未来は明るい、今こそデジタル製造の世界へ踏み出すとき
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、サプライチェーンが断絶し、生産調整や工場の稼働停止、一斉休業を余儀なくされた企業も少なくない。こうした中、サプライチェーンに回復力と柔軟性をもたらす存在として、あらためて3Dプリンタの価値に注目が集まっている。HP 3Dプリンティング事業 アジア・パシフィックの責任者であるアレックス・ルミエール(Alex Lalumiere)氏と、日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏に話を聞いた。
- 絶対に押さえておきたい、3Dプリンタ活用に欠かせない3Dデータ作成のポイント
3Dプリンタや3Dスキャナ、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。第4回は、3Dプリンタを活用する上で欠かせない「3Dデータ」に着目し、3Dデータ作成の注意点や知っておきたい基礎知識について解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.